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「あっでもね、僕が言うのも何だけどそんなに怖がることはないと思うよ!」
「そーなの?」
「うん。だってほら、見える範囲でもそこら中に毒消し草が生えてるから!」
ケリッツはキラキラと目を輝かせながら両手を大きく広げた。
しかし、いまいちピンと来ない歩斗。
「あっ、いまスラちゃんが居るそこ! ほらハートの形したそれそれ!」
「イムッ!?」
スララスは急にハイテンションで指差てビクッと体を震わせた。
「……あっ、これ? え~、これが毒消し草なの??」
歩斗はその場にしゃがみ込み、ジーッと地面に生えてる草を眺めてみた。
確かにケリッツの言うとおり、スララスのすぐ目の前に綺麗なハートの形をした草が生えている。
そこから漂ってるのかどうか分からないが、レモンに似た柑橘系の爽やかな匂いがして、何となく気持ちが安らぐような癒やされるような気持ちになる歩斗。
「そんじゃ、これを摘んどけば毒攻撃を受けても安心ってこと?」
「そうそう! ここ毒多島の毒消し草は高品質で有名だからね。ちょっとやそっとの毒なら口にパクッでケロッと治るはずだよ!」
正直、ケリッツがバトルの素人だと聞いてがっかりしていた歩斗であったが、その代わり知識が豊富そうだと分かって心強く感じていた。
すると、気持ちが落ち着いてきた事で、根本的な疑問がふと脳裏に浮かんだ。
「そーいえば、ここってどこ?」
「えっ? だから毒多島……」
「あっ、そうじゃなくて。えっと、ボクが住んでるのはニホ……ロフミリアっていう所から来たんだけど、同じ世界なのかなぁって」
自分で口にしながら少し混乱しかける歩斗。
要するに、歩斗が元々生まれ育ったのは日本。
なぜか自宅の半分が転移して行き来出るようになったのが異世界ロフミリア。
そのロフミリアにある謎の塔から魔法陣の力で転移してきたこの場所は、果たして同じ世界なのか。
それとも、また別の世界に来てしまったのか。
「ロフミリア? 聞いたことが……あっ、もしかして海のずっと向こうにある幻の──」
ケリッツの口からとても気になる言葉が飛び出しそうになった途端。
歩斗は背後から殺気のようなものを感じてとっさに振り向いた。
「うわっ! やばっ!!」
作戦会議の結果、『とにかく全員で一斉に攻め込もう!』とでも決まったのか、まさに10体の魔物が一斉に2人の元へと押し寄せて来た。
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