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再び動き出す魔物の群れ。
1体減ったとはいえ、まだ残り9体。
しかも仲間がやられた事で火を着けてしまったのか、これまでよりその勢いは増している。
「スララス、まだまだ油断出来ないよ!」
「はイム!」
歩斗たちにとって救いなのは、相手が大勢なわりに同じ方向から固まって来てくれる……と、その時。
9体のうち、スライムみたいな奴とニョロニョロした奴とキャベツみたいな形の魔物が歩斗たちの左側に、長細い布みたいな魔物とカニみたいなのとサングラスをかけたモグラみたいな奴が右側に回り込んできた。
正面からは毒ツバメ魔物と最初に迎撃した鳥の奴と円盤みたいな奴、つまり3体×3チームに分かれて3方向から歩斗たちを囲んで追い込むという作戦。
最初からそうするつもりだったのか、仲間がやられて警戒心を強めた結果なのかは分からないが、多勢を活かしたその作戦が歩斗たちを崖っぷちに追い込んだ事は間違い無い。
「ちょっ、いきなりそんな事してくるなんて……!」
「イ、イムイムゥ……!」
歩斗が少しずつズズズと後ずさりするのに合わせて、スララスもボユボユと小刻みに体をくねらせながら後退していく。
「アユト君、スラちゃん、だ、大丈夫??」
気付くと、心配してくれるケリッツの声がすぐ後ろから聞こえる所まで来ていた。
歩斗は弓を持つ手に力を込めながら、左、前、右、と視線を移して行く。
例えば、相手が大勢いるとしても全部同じ種類の魔物だとしたら、動きのパターンを読んだりなど何かしら攻略する手立てを見出して打開する事が出来たかもしれない。
「これ、ホントに『難易度E』なの……!?」
魔法陣に添えられていた言葉を思い出して愚痴をこぼす歩斗。
9種類の9体は厳しいよぉ~、と言わんばかりにスララスも「きつイムゥ~」とため息を漏らす。
その間も、毒魔物軍団はジリジリと間合いを詰めてくる。
ただ、圧倒的に数が多いにも関わらず一気に攻め込んでこない所を見ると、あちらさんも今までの流れから歩斗たちを警戒しているのかも知れない。
「ねえねえ、アユト君……」
すぐ後ろに居るケリッツが小声で話しかけてきた。
「なに? 頑張って一緒に戦ってくれるの??」
「も、もう、そんなこと言わないでよぉ~。僕なんてバトルしたら一瞬でやられちゃうからそれは無理だけど、この島へ来る前に色々と学んできたんだよ。出没する可能性のある魔物たちについてもね……!」
「おお! 教えて教えて!」
敵に囲まれて曇りかけていた歩斗の目に、一筋の光明が差した。
「うん。魔物図鑑とかで調べたことを思い出してみたんだけどね、あの9体のうち特に強いのは毒ツバメ、毒ヘビ、毒キャベツ、毒円盤の4体。つまり……」
「右側の3体は弱いのばかり……ってこと!?」
「そうそう! だからこっちから攻めるとしたら……」
「まず右の3体! わかったありがとうケリッツ!」
「うん! アユト君、スラちゃんがんば! ってことで、僕はもうちょっと安全な場所へ……」
ケリッツは腹ばいのままズリズリと後ずさりし、生い茂る草の中へと姿を消した。
「スララス、いまの聞いてた?」
「はイム! 相手にバレないうちに早速攻めるですイム!!」
「おう! よし行くよ!!」
歩斗たちは右の3体、毒布と毒ガニと毒モグラの魔物をロックオン。
「おりゃぁぁぁぁ!」
「イムイムゥゥゥ!!」
と、気合のこもった雄叫びを上げながら勢いよく走り出した。
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