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「イムゥ!!」
「わ、わかってるよ! えいっ!」
もしかして一生倒せないんじゃないか……一瞬よぎった不安を追い払うように、歩斗は思いきり矢を放った。
低空を猛スピードで飛んでくる敵にピンポイントで合わせるのは至難の業。
だが、この短時間で歩斗のスキルが飛躍的にアップしたのか、上質な弓矢のおかげか、とにかく放たれた矢は見事に的中!
パンッ!
破裂音と共にドサッと草の生えた地面に落ちた毒ツバメの体から、ついに赤い数字煙が飛び出した。
「よっしゃ! あと一発!!」
歩斗が喜んだのも束の間、なんとすぐさま毒ツバメの体がフワリを浮き上がり、弱々しく翼を羽ばたかせ始めた。
「な、なんで!?」
歩斗の口から咄嗟に出た一言に対し、ゆっくり飛んで近づいてくる毒ツバメのクチバシが開いた。
「オ……俺がやられたらアイツら全滅だロウ……そうはさせないロウ……」
瀕死状態とは裏腹に、毒ツバメの目はギラギラと輝いていた。
「イ……イムゥ……!」
恐れおののくスララス。
歩斗は口を真一文字に結び、決意に満ちた表情を浮かべていた。
そして、右手に持った矢をしっかり確認し、弓に添える。
ギリギリと張り詰める弦の音。
矢尻を向ける先はもちろん……。
「えいっ!!!」
気合と共に放たれた矢は、一瞬で毒ツバメの体をとらえた。
パンッ……と鳴らない。
HPが0になり、毒ツバメの体がスーッと消え……ることもない。
ただ静かに、『34』の青い数字煙が浮かんで消えた。
「人間の子供のくせに強すぎだロウ……俺の完敗だロウ……。身勝手だと分かってるが、俺の命と引き換えにアイツらだけは……」
てっきり最後の攻撃を受けたと勘違いして、死に際の言葉を呟き続ける毒ツバメ。
しかし、その体がスーッと消えることは無い。
「イムイムゥ……??」
スララスも何が起きたのかよく分からず、ハテナマークに満ちた眼差しで歩斗を見上げた。
「い、一体どーなったの……!?」
ずっと草むらに隠れていたケリッツが、しびれを切らして飛び出して来た。
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