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「だって……カッコ良すぎなんだもん!」
歩斗の言葉を聞き、さらにポカンとするスララスとケリッツ。
そんな変な空気を切り裂いたのは、バサバサと羽ばたく翼の音。
「うわぁーイムゥ!」
「ひぃぃ!!」
ゆっくり飛んで近づいてくる毒ツバメの姿に気づき、悲鳴をあげるスララスとケリッツ。
「どうしてトドメを刺さなかったんだロウ!? それどころか回復させるなんて……」
何をされたのか気付いた毒ツバメが問いかけた相手はもちろん歩斗。
「えっ? だーかーら、カッコ良かったから、って言ってるじゃん! 聞いてなかった?」
「い、いや、そんなの答えになって無いだロウ……」
戸惑う毒ツバメ。
紫色の顔が、心なしか少し赤みがかって見えた。
「だって、めちゃくちゃ仲間想いじゃん! 自分の体張って守るとか、絶対悪い人……じゃなくて悪い魔物なわけないよ~」
歩斗の“ストレートな言葉攻撃”が炸裂。
スララスとケリッツも、そういうことだったのか、と納得の表情を浮かべた。
そして毒ツバメはゆっくり飛び続け、歩斗のすぐ前まで来たところでストップ。
歩斗の目線に合わせた高さをキープしながら、静かに言葉を口にした。
「……お前の気持ちは分かったロウ。だが、元はと言えば攻撃をしかけたのはオレたちだロウ。このまま倒されずに終わるわけには──」
「もう! 何にも分かってないじゃんか! 僕たちは別に魔物を倒すためにやってるわけじゃないんだから!」
プンスカとやんわり怒りながら口を尖らす歩斗。
「……それじゃ、何のためにこの島へやって来たのかロウ?」
「そりゃもう、魔物を10体倒すため……あっ」
恐るべき早さで矛盾を口にしてしまった歩斗は恥ずかしそうにエヘヘと笑った。
一方、毒ツバメは真顔でそれを受け止める。
「10体……ってことは、やっぱりオレたちを全滅させに来たってことかロウ?」
「いや、違う違う! 魔物を10体って指示されただけだから、別に誰でも良いんじゃないの……かな?」
未だに魔法陣鍵ミッションについてピンと来ていない歩斗。
だが、魔物を率いるリーダーだけあって頭が切れるのか、毒ツバメの魔物は戸惑うことなく話を続けた。
「なるほどロウ。ということは、あと6体の魔物を倒す事さえできれば、それが誰であっても良いってことかロウ……?」
「うんうん! そゆこと!!」
「それは良かったロウ。ただ、1つだけ言っておくロウ」
「えっ? なになに?」
「アイツらはとにかく強いロウ。この場でオレたちを倒した方が何倍も楽だったと後悔するかも知れないがそれでも良いのかロウ?」
「うん。もう決めたから。キミたちとは戦いたくないって」
淀みなく答える歩斗の顔は、この島に来るまでと比べて幾分大人っぽくなっていた。
「良いだロウ」
毒ツバメはニヤリと笑った。
「オレの名前はポイズワロウ」
「おお、名前も格好いい! あっ、ボクは歩斗! で、こっちがスララスで、そっちがケリッツ!」
「よし、こっちへ付いて来い」
毒ツバメもといポイズワロウはバサッと大きく翼を羽ばたかせると、紫色のクチバシを遠くに見える森の方へと向けた。
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