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第4話 火の玉と3枚の銀貨
「なあ歩斗、ちなみにこれ、どうやって使えば良いんだろうか?」
直樹の問いかけに対して首を傾げる歩斗に代わって、ささみが
「にゃーん」
と鳴いた。
「お、おう……」
直樹は愛猫に返事しながら、この杖には少なくとも動物の言葉を理解できる能力は無いということだけは分かった。
そうこうしてる内に、黒スライムはジリジリと優衣との距離を縮めており、己の射程距離範囲に収めたとでも言わんばかりに、丸い瞳をキラッと輝かせた。
夜の森に吹き込んだ生ぬるい風が、硬直して動けずにいる優衣のポニーテールを揺らす。
そして、次の瞬間。
「イムゥゥゥゥ!!」
甲高い叫び声を上げながら、黒スライムがぴょんっと斜め上に向かって飛び跳ねた。
山なりに描かれるであろうジャンプの軌道における終着地点に立つ優衣の視線は、スライムの正面からスライムの底面へと移っていく。
「優衣ィィッ! うおぉぉ、よく分かんねーけど魔法の杖なんだとしたら魔法のひとつやふたつ出しやがれ!! えいやっ!!」
もはや迷ってる余裕など微塵もなくなった直樹は、野球のピッチャー的なフォームで右手に握りしめた魔法の杖を一旦後ろに引き、腰を左に回転させながら思いきり魔法の杖を振りかぶり、その先端を娘の頭上にいる黒スライムに向けた。
すると、
ボォッ!
という音と共に魔法の杖からオレンジ色の火の玉が飛び出した。
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