61人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「おお! で、出た!!」
歩斗が興奮と好奇に満ちた叫び声をあげる。
暗闇に映える火の玉は、黒スライムに向かって一直線に飛んでいく。
それに気付いた黒スライムは
「イムイムイムゥ!?」
と、焦った目をしてうろたえるが、時すでに遅し。
空中で移動する術は無かったのか、ただただ飛んでくる火の玉をその身に受けることしかできなかった。
そして……ボンッという音、そしてほんのりと焦げ臭い匂いが辺りに散らばる。
「イムゥゥゥ!!」
夜の森に悲鳴を響かせた黒スライムの体から、数字の『14』の形をした煙が飛び出し、すぐにフワッと消えると同時にスライム自体もまた、夜の闇に霧散した。
チャリンッ!
消えたスライムと入れ替わるように小さな丸い物体が現れ、重力に引かれてポトリと地面に落ちた。
「や、やったのか!? って、優衣!」
直樹は呆然と立ち尽くす娘に向かって一目散に駆け寄る。
「大丈夫か!? ケガはないか??」
「うん、全然。それより、火の玉みたいなのがボンッって出てフワ~ってなって、あの黒いのに当たったんだけど、なにアレなにアレ!?」
父の心配をよそに、娘の興味は自分が襲われそうになったことなんかよりも、謎の怪現象への好奇心で一杯だった。
「あ、ああ、なんだったんだろうな……。この杖の先っちょから出た……ように見えたけど」
直樹は手に持った魔法の杖をマジマジと見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!