第4話 火の玉と3枚の銀貨

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「うっひょー! 魔法だよ魔法! パパが魔法を使ったんだ!!」  そう叫びながら、歩斗が2人の元に駆け寄ってきた。   「魔法!? そんなまさか……」  この場で唯一の大人である直樹は、それに相応しく振る舞わねばと、摩訶不思議な出来事に対して信じられないといった表情を浮かべてみた。  が、しかし、自分の手で振りかざしたこの杖から火の玉が飛び出たのは紛れも無い事実。 飛んでいった火の玉が命中し、スライムを倒したこともその目ではっきりと目撃しており、その現象を上手くまとめるための言葉として『魔法』以外に思い当たるものは無い、というのが正直な感想であった。 「そうだ。スライムを倒したとき、なんか落ちてきたよな……」  直樹はポケットから取り出した携帯のライトを地面に向けた。  すると、優衣が履いている水色のスニーカーのすぐ前に、何かが落ちていることに気付く。 「アユ、ちょっとこれ持ってて」  直樹は魔法の杖を一旦歩斗に預けると、腰をかがめて地面に落ちている3枚の"なにか"を拾い上げた。 「これは……コイン?」  直樹は、携帯のライトでソレを照らしながら呟いた。 「えっ、なにお金!?」  優衣が直樹の手元を覗き込む。 「えっ、なにお宝!?」  続けて歩斗も直樹の手元を覗き込んだ。  銀色に輝く円い形をした薄いその物体を一番的確に表す言葉は恐らく"銀貨"。  つまり、コインであり、お金であり、お宝であった。  サイズは500円玉より少しだけ大きいぐらいで、表面にはスライムのシルエットのような模様が描かれていた。
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