第5話 魔法の杖が示す答え

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「おかしいな……」  直樹は、マイホームを建てるにあたり、妻の香織、そして時には子ども達を交えて、何度も何度も"デザイン会議"を重ねたことを思い出していた。  その際、屋根の色に関して直樹自身は暖かみのある茶系を希望したが、外壁よりも直射日光を受けやすい屋根に関しては、色あせも少なく汚れが目立たないという合理的な理由によりグレーに決まった……という経緯をハッキリと覚えていたが故の呟きだった。   「暗いからそう見えるのかな?」  直樹は自分の足下で、同じ辺りを見上げているささみに訊いてみた。 「にゃ……にゃーん……」  歯切れの悪い返答。 「だよなぁ……って、そもそも妙なことだらけなんだけど」  そう呟きながら、直樹はゆっくりとリビングに向かって左側に歩き始めた。  そして、家の側面を確認してみようと思ったその時。 「あなた~。早くしないと、からあげ売り切れちゃうわよ~!」  妻の香織から緊急性かつ重要性の高い言葉が投げかけられ、歩みを止める。  家の周りがどうなっているのか気になるものの、背に腹は代えられない。  鳴り止んでいた腹の虫も途端に目を覚まし、直樹の足を家の中へと(いざな)った。  確認の続きはいつでも出来るけど、からあげを逃がしたら二度と戻ってこないからな……と、直樹はサンダルを脱ぎ、ささみと共にリビングへ上がる。  そして、一応用心のため窓を閉めて鍵を掛けて、カーテンもびっちり閉じておく。  あんな暗い森の中で煌々と明かりを放ち続けるなんて「どうぞ襲ってきてください」と言ってるようなものだが、裏を返せば明かりさえ漏らさなければこの家の存在もそう簡単に見つからないように思えたのだ。  ……って、そもそもあの森は何なんだよ!  心の中で叫びながら食卓につき、何事も無かったかのように残り僅かなからあげをつまむ直樹。   「あっ、それボクが狙ってたやつ!」  歩斗がブーッと頬を膨らませる。
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