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その様子に気付いた直樹は一旦足を止めた。
前に雑誌で見た『妻が夫に切れる瞬間ワースト5』の1位か2位に、『話をちゃんと聞いてくれない時』が入っていたのを思い出したからである。
「ごめんごめん。えっとじゃあ、武器を持って無かったってことは、まだ序盤なの?」
「……序盤? ってどういうこと?」
香織は直樹の顔を見上げてながら小首を傾げた。
直樹は、この会話の噛み合わなさからすると、もしかして彼女がしているのはゲームの話ではないんじゃないか……と思い始めていた。
だとすると一体何の話をしてるんだろうか?
その間もジーッと見つめ続ける妻の大きな瞳には、なんて答えたらいいのか分からずに困った表情を浮かべる自分の顔が映っているのが見えて、直樹は焦りを募らせた。
ファンタジー世界を舞台にした小説やマンガなんかでもスライムは出てくるだろうけど、香織が言ってた『庭でスライムを見かけた』という言葉とは合わない気がするし……と、夫婦の会話と言う名の"簡単そうで実はやっかいなミッション"に直樹が手こずっていたその時。
「ママー、お腹すいた~!」
「ボクもすいた~。ペコペコで死にそう~」
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