第7話 陽気な商人と世界の名前

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「あっ、ナオキさん。いつこちらへ?」  ひとしきりささみを撫で終えたポブロトは、立ち上がりながら直樹に向かって言った。 「いつ……って、昨日の夜だけど、ここは一体……」 「なるほど、来たてほやほやだ! それじゃ、さぞかし戸惑ってるでしょう?」 「ああ、その通り。なんでうちのリビングの外が森になったのか、この杖は何なのか、黒いスライムは何だったのか……」 「ははっ、結構結構。その様子からして、()()()()()()に来て最初に遭遇した人間が僕だったみたいね。よしっ、一から説明差し上げます!」    ポブロトはそう言って、右手の親指を眉間に当てると同時に右足を前に出すというポーズをとる。  直樹は、その動きに関してはちょっとよく分からないものの、ポブロトの言葉には頼もしさを感じた。 「それじゃ、早速だけどこの杖について……」  直樹が最初の質問を切り出そうとしたその時。 「あっ、マズい! ナオキさん、ささみさん、ちょっとこっちへ! ほら、早く早く!!」  ポブロトはなぜか急に慌てだし、道沿いから森の中へと後ずさりしながら直樹たちを手招きした。  何が何だか分からないものの、緊迫感に満ちた彼の表情を察し、されるがまま森の中へと入っていく直樹とささみ。 「ふぅ……ここなら大丈夫かな」  ポブロトは木と木が密集している場所に立ち、空を見上げた。  何を確認しているんだろう……と、直樹も顔を上げてみる。  さっき居た場所との違いがあるとすれば、空の面積だろうか?  木々の葉が重なり合ってることで、かなり日射しが遮られているのが目に付いた。  そして、僅かに見える水色の空に何かが飛ぶ姿。 「あれは……飛行機? それともヘリコプターか……」  直樹の呟きに対して、ポブロトの耳がピクッと動いた。 「いや、違います。ほら、よーく見てみてくださいな」 「えっ、それじゃ一体……」
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