第8話 この世界のシステムと赤い煙

2/4

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
 それによると、ロフミリア全体図を表す三角形の左下の頂点付近が人間の国、右下の頂点付近が魔物の国ということで、初心者でもすぐに覚えやすくて助かるな、と直樹は思った。  元々方向音痴などでは無かったのだが、スマホの地図アプリを使い始めてからはそれに対する依存度が高くなり、アプリを封じられたとしたら余裕で道に迷ってしまう自信があった。 「なるほど、分かりやすい。ってことは、なるべく東の方……魔物の国方面には行かない方が良いと?」 「ですね~。それはその通りなんですけど、それだけじゃないと言いますか……。とりあえずは、西の方にもあまり進まないほうが良いかと」 「西……ってことは人間の国?」 「ええ。人間の国、その名を<ロフレア>と言います。商人という職業柄、色々な噂を耳にするんですがね、ロフレアの中枢部──特に王族の中には、ナオキさんのような<異世界からの転移者>に対する不信感を抱いてる人たちがいるらしいんです」  ポブロトはため息をついた。   「そっか。まあ、この世界にはこの世界の事情があるんだろうから……って、そもそもなんでうちの家──の半分がこの世界に転移してきたのか気になるんだけど?」 「あっ、それはですねぇ……たまにそういうことが起きる、ってことです。としか僕には言えないんですよねぇ。確かに、過去にもナオキさんと同じ"ニホン"から転移してきた人が居たからこそ、こういうアイテムが存在すると言えるのですが……」  ポブロトは肩にかけた布袋の中からさっきの小瓶を取って直樹に見せた。 「おお、それそれ! 結局、その緑の液体ってなんだったの? あっ、ごめん。こっちから質問ばかりしちゃって……」 「いや、全然OKでーす! 基本、喋るの大好きですし、それにナオキさんはお得意さんになってくれる予感がしますんで……」 「ん? お得意さん……?」 「それはさておき、緑の液体ですよね緑の液体。あれはニホン語とロフミリア語の翻訳魔法をじっくりコトコト煮詰めて作った〈魔法ポーション〉です。そのおかげで、こうして普通に話せるというわけです」 「ほ、翻訳魔法!?」 「にゃーん!?」  直樹の瞳が好奇心によってキラッと光輝き、ついでにささみも鳴いた。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加