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どういう仕組みかは分からないにしても、さっきの様子からして翻訳するための何らかのアイテムだとは思っていたが、まさか魔法だったなんて。
しかも、魔法を煮込むとか、そんな突飛な発想考えたことも無く、感心すらしてしまっていた。
そして、〈スマホゲーム事業部〉のリーダー的責務を負っている身として、開発中のゲームの設定にその発想を活かすことができるのでは……なんてことを考えていた。
あっ、でもその場合、権利関係とか大丈夫のか……使用の許可が必要な場合、この世界の誰に申し入れすれば良いのか……と、直樹は至極現実的な不安を抱き、右手に持った杖をギュッと握った瞬間ハッとした。
「そうだこれ! ねえ、ポブロト。これって〈魔法の杖〉ってことで良いのかな? 見た目からしてそんな雰囲気だし、昨日の夜スライムを倒した時に火の玉出たし……」
「ほう、ちょっと見せて貰えます?」
ポブロトは直樹の持つ杖を右から見たり左から見たり、下から上まで舐め回すように視線を細かく動かしながら確認した。
「はい。確かに魔法の杖ですね。といっても、魔力を持ってるのは杖の部分じゃ無く、その〈魔練リング〉ですが」
ポブロトは、杖の中央辺りにはめられているくすんだ金色のリングを指差した。
「えっ、これが? ただの装飾かと思ってた……」
「はい。火の玉が出たってことは恐らく〈火の魔練リング〉でしょうね。さすがに、レベル的には低級の部類だと思いますが」
「ほう、なるほどね……」
納得したように頷く直樹だったが、正直今の説明だけで把握しきれたわけでは無かった。
ただ、ゲーム好きの勘として、その名前の響きから例えば<氷の魔練リング>だったら氷の魔法が、<雷の魔練リング>だったら雷の魔法を出すことができるようになるんじゃないか……と勝手に予想し、勝手にワクワクしていた。
まあ、とにもかくにも、手にしたその杖が魔法の杖であった喜びは間違い無いものでそれは良いとして、あとひとつ、どうしても気になる事案が残っている。
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