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第9話 HP制度とアイテム袋
自分の右肩から飛び出し、すぐに消えた赤い煙。
数字の『1』の残像が直樹の瞼に焼き付いていた。
そして、脳裏を駆け巡る家族との楽しい日々が心に突き刺さり、じんわりと涙がにじみ出……そうになる一歩手前。
「ハハハッ、ジョーダンジョーダン。冗談ですよ~」
ドッキリ大成功、といったノリでポブロトがウインクした。
「えっ……冗談……??」
戸惑う直樹。
「にゃーん!!」
弄ぶなー……と言わんばかりに爪を立てて威嚇するささみ。
「ごめんなさいごめんなさい! 悪気は無かったんです。瀕死状態に出る赤い煙の何たるかを実際に見てもらいたかっただけで……。あっ、これどうぞ。食べればHPが回復しますんで」
ポブロトは布袋から取り出したアイテムを直樹に手渡した。
それは、パッと見おでんに入ってる結び昆布のような、リボンの形をした緑色の草だった。
「こ、これは……もしかして薬草?」
「おお、大正解です! よくおわかりで!」
「ま、まあ、減ったHPを回復するアイテムって言えば薬草だし、見た目的にもそんな感じだし……って、いま俺って瀕死状態なんだよね?」
「あ、はい」
「うーん、その割りにはどこか苦しかったり、立って居られないってことも無いんだよね……。ここだけ少し痛いけど」
直樹は恐る恐る薬草を口に入れながら、手足や胸など自分の体の各パーツの状態を確認しつつ、唯一右肩だけが若干ジンジンするのに気付いて苦笑いした。
「それはズバリ<HP制度>のおかげです!」
「……エイチピーセイド??」
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