第9話 HP制度とアイテム袋

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「はい。その昔、人間も魔物もとにかく好戦的だった時代。毎日のように血で血を洗う争いが繰り広げられていたのですが、その光景に嫌気が差した人物が居たんです。その人物はこの世界の歴史において5本の指に入るほどの大魔法使いで、とある〈究極全体魔法〉を唱えたんです」 「キュウキョクゼンタイ……??」 「ええ、平たく言うと『この世界の全ての生き物に対して効果のある魔法』です。そして、その魔法の効果は『全生物の体力とダメージをHP化し、曖昧な感覚を全て数値で処理する』というものでした。それにより、どれだけダメージを負ってもHPという数値が減るだけで、出血や打撲、骨折などはせずに済むようになりました。もちろん、痛覚を消したわけでは無いので多少の痛みは感じますし、瀕死状態でさらに追い打ちを受ければ死んだりもしますが……って感じですが、わかって貰えました?」  ポブロトは一息で言い切ると、上目遣いで直樹の顔を見た。 「うーん、まあ何となく……分かったかな。まあとにかく仕事に活かせそうな設定というか何というか……って、まてよ? さっきは焦ってて気付かなかったけど、俺のHPってめちゃくちゃ少なくない? 1のダメージを5、6回食らって瀕死の赤が出なかった?」  直樹は妙に恥ずかしくなり、頬を赤らめた。 「いや、大体そんなもんですよ。昨日来たばかりなら、レベルもまだ1でしょうし」 「レベル?」  直樹は正直今までの話の流れから鑑みて大体の予想はついていたが、一応訊いてみた。  ついさっき会ったばかりの人間に対し、何でも丁寧に解説してくれるポブロトに好感と信頼を抱き始めており、その言葉は信用に足るものだと思ったからだ。 「はい。ロフミリアにはレベルという概念があり、レベルが上がるほどHPや魔法を使うためのMPなどが増えていくんです。そして、この世界に転移した人は年齢など関係無くみな一律レベル1から始めることになりますので、ナオキさんのHPが6とかだとしても全然恥ずかしいことじゃないんで安心してください!!」  ポブロトは受験生を励ます先生のように、右手で拳を作りながら力説した。
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