第9話 HP制度とアイテム袋

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「すみません。それじゃ、お言葉に甘えてさっさと行かせて頂きます」 「はは、どーぞどーぞ。色々教えてくれてありがとう。凄く助かったよ」 「それは良かったです! 僕は仕事でちょくちょくこの辺り通るんで、またすぐにお会いできると思いますよ」 「それは助かる。っていうか、こう言っちゃなんだけど何となく境遇が似てるような気がしなくもないんで、いつかゆっくりお酒でも飲みながら語り合いたいもんだ」 「おお、ぜひこちらこそ!」  初対面とは思えないほど、短い時間でぐぐっと距離を縮めた2人のオジさん──いや、家族を守るために戦う2人の戦士は、堅く熱い握手を交わした。   「そうそう。この世界に来たばかりで色々大変でしょうから……」  と呟きながら、ポブロトは白い布袋の中から適当にいくつかアイテムを取りだし、その布袋に似た別の布袋の中に入れて直樹に差し出した。   「えっ、これくれるの? いや、ちょっとさすがに悪いよこれは……」 「いえいえ。もちろんタダじゃないですよ! これに関しちゃ商売ですんで。もちろん後払いで結構ですんで!」  そう言って、ポブロトはウインクした。 「あ、そ、そう。はは、それじゃありがたく頂いとこうかな。次に会うときまでに代金を稼いでおけたら良いんだけど」  直樹は笑顔でアイテムの詰まった布袋を受け取った。 「それなら助かりますけど、くれぐれも無理はしないで下さいね」 「ああ、分かってるよ。ここから東にある魔物の国、あと西の方にある人間の国には近づいちゃダメってね。あっ、だとすると、北の方だったら大丈夫なのかな?」  地図に描かれた三角形を頭に思い浮かべながら直樹は訊いてみた。 「ダメですダメ!! 北方面だけは絶対に! 魔物の国や人間の国なんかと比べものにならないぐらいに……」  ポブロトは語気を強めながら答えた。  直樹は、その様子からして本当にヤバそうな感じで、比べものにならないぐらい何なのかがとても気になったが、これ以上引き留めるのは申し訳なさ過ぎると思い、口から出掛かった質問をグッと飲み込んだ。   「了解了解! 絶対行かないようにするよ」 「お願いします! あっ、でも気を取り直してください。少なくともレベルが低い内は遠出を避けた方が良いですよー。活動範囲はこの近辺に限られてしまいますが、この辺りは〈地下ダンジョン〉が豊富にあるんで十分楽しめると思いますよ! ってことで、いよいよ時間がヤバいので行きます! また今度!」  ポブロトは矢継ぎ早に言い終えると、直樹に背中を向け、脱兎の如く森から飛び出し黄土色の道を駆け抜けていった。
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