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一歩、二歩と階段を降りる直樹の後ろをささみが付いていく。
階段は固いレンガのような質感で、横幅は人がすれ違えないぐらい狭い。
入ってすぐのあたりは頭をかがめないとぶつかってしまうぐらい天井が低く、直樹はしばらく猫背状態で階段を降りていたが、徐々に地面と天井の距離が開いていったので普通に背筋を伸ばして歩けるようになった。
壁もレンガ色で、階段と一体化して見える。
不思議なのは一定して輝き続ける明かりの源。
電球やロウソクなど光源となるものが全く見当たらないのに、地下とは思えないほどの明るさ。
「まっ、暗いよりは全然良いけど……」
と言いつつ、降りても降りても平たい地面が見えてこない状況に不安を覚え始めていた直樹は、ふと後ろを振り向く。
「にゃーん」
ちゃんと付いてきてるよー、といった顔でささみが直樹を見上げる。
「うん、いや、別に怖いとかそういうんじゃ……って、あっ! 着いたぞ!」
ふいに、階段の終わりが直樹の目に飛び込んできた。
軽い足取りで数段降りると、そこは広めの教室といった大きさの部屋……というか、広間というか。
四方をレンガ色の壁で囲まれており、床には何も置かれていない。
扉も窓も飾りも一切無い。
地上から地面を斜めに貫いていた階段は、そんな地下室の隅に繋がっていた。
「何も……無い? もしかしてハズレダンジョン?」
直樹は目を凝らしながら小声でボソッと呟いた。
煌々と輝いていた階段とは打って変わって、この部屋には地下らしい暗さがあった。
明るさに慣れた目では、向かいの壁がギリギリ見えると言った程度だが、部屋の中には敵の存在もいなければ、宝箱も何も無いじゃないか……と、がっかりしかけたその時。
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