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「うわっ!! で、出た!!」
直樹は、部屋の中央に佇む黒いスライムの存在に気付く。
その色ゆえに見落としていたようだ。
「昨日のヤツと同じ……だよな?」
「……にゃーん」
昨日のヤツとはもちろん、いきなり草むらから飛び出し、優衣に向かって飛びかかってきた黒スライムのこと。
夜目が利く猫のささみが否定しないのであれば、そいつで間違い無いと直樹は口元を緩めた。
なぜなら、そいつをあっさり倒したのは他でもない、自分自身だったから。
「コイツ一匹か……?」
直樹は右手に持った魔法の杖の柄に左手を添えつつ、ゆっくり顔を左右に動かして部屋の中を確認する。
段々と暗さに慣れてきた目に、スライム以外の敵は映らなかった。
「それなら……先手必勝!」
直樹は魔法の杖を振り上げて、一歩二歩とスライムに近づいて行く。
昨日はあっさり倒せたとは言え、もしかしたらジャンプでの体当たり以外にも何か特殊な攻撃を持ってる可能性が無きにしも非ず。
なにかしでかしてこない内に、さっさとやっつけてしまった方が得策とみたのだ。
「ほら……一発で楽に仕留めてやるからなぁ……」
どちらかというと悪役寄りのセリフを吐きつつ、直樹は真ん丸なスライムの目を見据えながら徐々に距離を詰めていく。
その後ろを、忠犬ならぬ忠猫ささみが両サイドや後ろに目を配りながら付いていった。
そして、昨日倒したときと同じぐらいの近さに差し掛かる。
「……よし! とりゃ!」
直樹は、大人しくジッとしたままの黒スライムに向かって魔法の杖を振りかざした。
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