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ボォッ!
という音と共に魔法の杖からオレンジ色の火の玉が飛び出した。
「出た!」
直樹の口からは喜びの声が飛び出す。
唯一不安があるとすれば、いくら杖を振っても昨日のように魔法が出ない、なんていうアクシデントが起きることだったので、ひとまず火の玉が出てくれただけでガッツポーズものだった。
そして、その玉は見事スライムに命中。
「イムゥゥゥ!!」
という叫び声をあげるスライムから『13』という数字の煙が飛び出した。
昨日はそれが何なのかさっぱり分からなかったが、今はそれがダメージだと分かっている。
しかも、ポブロトに小突かれた時のダメージが『1』だったことを考えると、この魔法の杖はなかなか実用的な武器なんじゃないか、と満足げな表情を浮かべる直樹。
チャリンッ。
スライムを撃退したことを現す勝利の音が地下室に響き渡った。
それはもちろん、報酬の銀貨が床に落ちた音。
「よし! やったぞ!」
人並みにお金が好きな直樹は、喜び勇んで銀貨の元へと駆け寄った。
「1、2、3……4! 今回4枚あるぞ! いえーい!」
銀貨を拾って大人げなく小躍りする直樹。
「にゃーん!」
やったねー、とばかりに鳴きながら直樹の元へとゆっくり歩いて行くささみ……が突然、
「にゃーん!!!! にゃにゃ!! にゃにゃ、にゃーん!!」
と、興奮気味に叫びだした。
「おいおい、急にどうした。あっ、さては銀貨が欲しいのか? 分かった分かった。今回の分は俺とささみで半分ずつ──」
「にゃーん!!!!」
直樹の言葉を遮るように強く叫ぶささみの視線は天井を向いていた。
「……ん? 上になにかあるのか……うわぁ!!!!」
ささみに習って見上げた直樹の視線に飛び込んできたのは、天井に張り付いている紫色のスライムだった。
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