61人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
なんだなんだ?
ついさっき魔法の火の玉で黒スライムを倒したのを見てるはずなのにこの余裕は……と、直樹は不気味に感じていた。
ひょっとして、黒よりも紫の方が強いってことなのか……いや、それにしたって、この杖で攻撃した場合13ほどのダメージを食らわせる事ができるんだから、少し強いぐらいであれば一発KOは十分可能なはず。
黒と紫なんて、色合いが劇的に変わってるわけじゃないし……
「にゃーん!!」
「おお、ささみ! だよな? 全然大丈夫だよな!」
同意して貰えたと勝手に喜ぶ直樹とは裏腹に、ささみはヒゲをピンと伸ばし、危機感に満ちた表情を浮かべていた。
「にゃーん、にゃーん!!」
何かを訴えかけているかのように鳴き続けるが、慢心の直樹には伝わらない。
「わかったわかった。さっさと倒すから! ほら、いくぞ!」
直樹は魔法の杖の先端を紫スライムに向けた。
「イムイムイムゥ~」
「おいおい、これから倒されるってのに余裕だなおい。でも悪いけど、後払いで買ったアイテムがたんまりあるもんでね。その返済を手伝ってもらうよ!」
すっかり慣れた手つきで、直樹は紫スライムに向かって魔法の杖を振りかざす。
すると、火の玉が……出ない!
「えっ!? ど、どうしたおい!?」
直樹は焦りまくった顔で2回、3回と魔法の杖をスライムの方に振ってみるが、一向に火の玉が出る気配が無い。
じんわりと額から汗が噴き出してきた。
「にーん! にーん!!!」
「いや、出ないんだってほら……ほら」
直樹は魔法の杖による空振りを繰り返しながら、くぐもった鳴き声に変わったささみのいる方へ顔を向ける。
「……ちょ、ちょっと待って! おい、ささみ。それまさか──」
最初のコメントを投稿しよう!