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ささみが金色のリングをくわえているのに気付いた直樹は、咄嗟に魔法の杖に目をやった。
すると、ポブロトが〈火の魔練リング〉と呼んでいた金の輪がハマっていないことに今さら気付く。
「しまった! さっきグネった時の反動で外れたのか!」
「……にゃーん!」
ささみが口を大きく開けると、くわえていたリングがカランと音を立てて床に落ちた。
直樹はすぐにそれを拾おうとした。
と、同時に、
「イムイムイムゥゥゥ!!」
紫スライムが雄叫びを上げながら、隙だらけの直樹の背中に向かって飛びかかる。
「あっ、やば……」
どう考えても、拾ったリングを杖にはめて攻撃するだけの余裕は無く、直樹の脳裏に自分自身が銀貨に変わる映像がよぎった。
だとすると俺は銀貨何枚なんだろうか……などとしょうも無いことを考えたその瞬間。
「にゃーん!!!」
ささみが全身のバネを使い、直樹の背中を飛び越えるほどの大ジャンプ!
「うわっ!」
直樹が見上げると、そこには茶色の中に白い毛が混じったささみのお腹。
まるでスロー再生してるかのように綺麗な放物線を描きながら、両前肢の爪を立てて空中を舞う。
「イムゥ!!」
「にゃーん!!」
まるで剣の達人同士が互いに走ってすれ違うように、紫スライムとささみが空中で交差する。
ささみは紫スライムの体当たりをヒョイッとかわすと同時に、爪によるひっかき攻撃を炸裂!
スライムの体から『16』の煙が飛び出した。
「イ……イムゥ……」
弱々しい言葉とともに力なく落下するスライム。
「にゃーん!!」
勝ち鬨をあげるささみがスッと地面に着地するのと同時に、チャリンと心地良い音が鳴った。
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