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「おお! おおお! 凄いぞささみ!」
相棒の勇姿をしかと見届けていた直樹は、魔法の杖に魔練リングをはめながらヒーローの元に駆け寄った。
「にゃーん! にゃ、にゃーん!」
底抜けに愛らしい小さな勇者は尻尾をピンと立てて、ドジな仲間の魔法使いに満面のドヤ顔を向けた。
「いやしかし、どこであんな技を? ダメージ16とかこの杖の魔法を越えてるんだけど。って、銀貨銀貨……」
異世界で借金を背負った魔法使いが、チャリンと音の鳴った方へ目を向けたその時。
ズッチャ、ズッチャ。
シャン、シャン、シャン♪
ズッチャチャ、ズチャチャ。
ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪
突然、どこからとも無く賑やかな音楽が近づいて来た。
「ん? な、なんだこれは!?」
直樹は驚き、周りをキョロキョロ見渡した。
すると、どこから現れたのかマーチングバンドのような男女4人組が、それぞれ小太鼓(のようなもの)やギター(のようなもの)などをかき鳴らしながら、隊列を組んで直樹の前を横切るように行進している姿があった。
新手か!?
と、直樹は一瞬焦ったが、どうも敵意があるようには見えなかった。
しかも、その4人の誰もが異様に小さかった。
コビト、とでも言うのだろうか。衣装も凝っていてまるで良く出来た人形のようだが、間違い無く生気に満ちた人間にも映り、直樹は目をパチクリさせた。
ただ、ここは日本じゃなくロフミリア。
魔法の杖を振り回し、スライムと戦ったりしてきた今となっては、それだけでは驚くほどのことでは無いのだが、単純にこのタイミングで何のために現れたのが謎すぎるが故のパチクリだった。
そして、そんな疑問などお構いなしとばかりに、小さなマーチングバンドは陽気な音楽を奏でながら、一直線にささみの方へと近づいて行く。
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