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「ちょ、ちょっと、うちのささみに何かご用で……」
妙にかしこまった言葉を投げかけつつ、バンドメンバーに近寄る直樹。
すると、先頭のリーダーらしき女ギタリストが『ジャカジャーン♪』とギターをかき鳴らし、ささみの目の前でピタッとその場に立ち止まった。
「せーの……レベルアップおめでとう!」
「おめでとう!」
ズッチャ、ズッチャ。
シャン、シャシャシャン♪
「にゃ……にゃーん」
ささみも戸惑いながら一応ありがとう的に鳴いた。
「えっ、レベルアップ!? もしかしてあの紫スライムを倒したから!?」
輪を掛けて大きく戸惑う直樹。
その存在に気付いたリーダーのコビトギタリストが、直樹を見やる。
「我々は〈レベルアップ隊〉。勇敢な猫戦士ささみさんが今回の戦闘でレベル1からレベル2にアップしたことを祝うためにやってきた次第。ちなみにあなたはまだレベル1……ぷっ」
ズッチャ、ズッチャ。
ズコーン♪
「ああそうですか……って、いま笑ったでしょ!? って、無駄にそれに合わせた伴奏付けてるし!」
ささみに先を越されたジェラシーもあってか、大人げなく文句を付ける直樹。
レベルアップ隊のメンバーは全く意に介すること無く、足並みを揃えて回れ右し、来た時と同じように陽気な音楽をかき鳴らしながら行進し始めた。
ズッチャ、ズッチャ。
シャン、シャン、シャン♪
ズッチャチャ、ズチャチャ。
ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪
「にゃっにゃ、にゃにゃにゃーん!」
リズムに合わせて、気分良く鳴いて見送るささみ。
呆然と立ち尽くし、それを羨望の眼差しで見つめる直樹。
ズッチャ、ズッチャ、ズッ……と、音楽がフェードアウトしていくと共に、レベルアップ隊の姿がスーッと消えて行った。
「ふー……。さてと、銀貨銀貨♪ ズッチャ、ズッチャ」
気持ちを切り替えるべく、何事も無かったかのように振る舞う直樹だったが、皮肉なことにレベルアップ隊のリズムが頭にこびりついてしまっている切なさよ
そんな直樹に、ちょっとした嬉しい出来事が舞い込んだ。
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