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「よし、銀貨発見……って、1枚? なんだよ紫スライム。ささみがレベルアップしてるし、お金少なめ経験値多めタイプだったか……ん? 違う。これは……金貨だ!」
手に取ってよく見てみると、確かに銀貨とはひと味違う輝きを放っていた。
明らかに、それ1枚で銀貨4枚より価値のありそうな金色の輝き。
「やった! でかしたぞささみ!!」
直樹は満面の笑みでささみを抱きかかえると、その場でくるくる回って喜びを表した。
「よし! これでこのダンジョンクリアだよな! 帰ろう帰ろう!」
「にゃーん!」
直樹の腕の中から飛び降りたささみは、勢いよく階段に向かって走って行った。
レベル2になったからか、その足取りは軽やかで俊敏性に富んでいた。
「ちょ、ちょっと待って、待って……」
中年に片足を突っ込んでいる36歳レベル1の直樹は、先ほどグネった左足をかばいつつ、茶色い背中を追って走った。
「はぁ……はぁ……この階段、こんなに段数あったっけ……」
直樹は愚痴り愚痴り階段を上り、何とか出口近くまでたどり着いた。
「……にゃーん!」
「ん? どうかしたのか?」
とっくにたどり着いてたささみが、何かを訴えかけるような目で直樹を見上げた。
「……あっ、おかしいな。確か開けっぱなしでここに入ったよな?」
直樹は、ダンジョン入口の木の扉がきっちりと閉まっていることに気がついた。
自分の家に帰ってきたんじゃあるまいし、ダンジョンに入る時にわざわざ扉しめたりなんかするわけが無かった。
とは言え、そこまで重いものでも無かったし……と、直樹は両手で扉を押し上げようとした。
「……あれ? おかしいな……ビクともしないんだけど……」
グイッと力を込めてみるが、木の扉はビクともしない。
「にゃーん」
ささみが直樹に加勢すべく最上段に立って前肢を伸ばそうと頑張るが、如何せん背が届かない。
「うぉぉぉ! とりゃぁぁぁ! ……だ、だめだ。全然開かない! くそぉ、俺のレベルが2ならこんな扉……」
何気にまだ引きずってる感満載の言葉を直樹が吐き出したその時。
ルールルルーラララー♪
と、曲が鳴った。
「なんだなんだ、またレベルアップ隊か? なにか忘れ物でも……いや違う! 携帯だ!」
音の出所は直樹のポケットの中。
念のためにと持ってきていたスマホだった。
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