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「ったく……まあ、ママのからあげは死ぬほど美味いから仕方無いか。……って、そういえば、途中になっちゃってたけどスライムがどうって件──」
「いいのいいの。とりあえずからあげ揚げてこなくちゃ。またあとでね」
意外とあっさり切り上げられてしまい、直樹は逆にスライムの件が気になって来たものの、この瞬間はそれよりもからあげが勝ってしまっていた。
「ママ~、お手伝いする~」
優衣がキッチンに向かう母の背中を追って駆け寄る。
「おっ、助かる! じゃあ、切った鶏肉に片栗粉付けるところを……」
女子チームが居なくなり、廊下に残された父と息子。
「よし、じゃあ俺たちは待ってる間、アレで勝負するかアレで?」
「うん! 今日も負けないぜ!」
「いやいや、パパには秘策があるからな。今日から連勝だ」
と、男子チームは涼坂家で絶賛流行中のレースゲームで対決することになった。
廊下からゲーム機のあるリビングに入る際、直樹は一瞬さっき香織が言っていた言葉を思い出し、庭に面した窓の方をチラッと見たが、オレンジ色のカーテンに遮られて外の様子は見えなかった。
直樹はフッと小さく息を吐き出し、ローボードからゲーム機を取り出してスイッチを入れた。
「うまぁ!!」
「おいしー!!」
「相変わらず最高だ!」
サクラだとしたら下手すぎて雇い主から怒られそうなぐらい、香織の作ったからあげをべた褒めする3人。
キッチンとリビングに挟まれたダイニングのテーブルの上に、4人分のお皿やコップが所狭しと並んでいた。
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