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第13話 大きな宝箱と小さな宝
異世界の森の中で息づく木々たちは、元の世界と似てるようでどこか違っている。
晴れた空の水色も、少し違う水色だし、白い雲も……雲は同じ感じ?
香織は興味津々の眼差しで周りをキョロキョロしつつ、ぴょんぴょんと飛び跳ねるふんわりボブスライムの背中を追って歩いていた。
「ホント、スラちゃんと会えてよかったぁ。私ひとりで森をうろうろしてたら絶対迷って──」
香織が呟こうとした矢先。
「イムゥ、イムゥ!」
香織を先導していたボブスライムが、ピタッとその場に立ち止まり、クルッと振り向いて何かを訴えかけるように鳴きながらぴょんぴょん跳ねた。
「あら? もしかして……」
香織はスライムの向こう側に目を向けると、地面に置かれた大きな宝箱が目に入る。
実物の宝箱を見るのは初めてだったが、ゲーム好きの香織にとってお馴染み感満載のデザインと形をしていたため、直樹の言っていた宝箱がそれだとすぐに分かった。
「あっ、でもあの人『フタが開いてる』って言ったような気がするんだけど……」
確かに、目の前の宝箱はきっちりとフタが閉じている。
まっ、風かなんかで閉まっちゃったのかもね、と香織は気にせず近寄っていく。
「イムイムゥ~」
すっかり香織に懐いたボブスライムも、ぴょんぴょん跳ねながら隣に並んで付いていく。
直樹は『宝箱の近くの地面に木の扉があって……』と言っていたが、香織の興味はそれよりも何よりも宝箱の中身に向いていた。
「ねえ、スラちゃん。この宝箱って、勝手に開けちゃってもいいのかな? もしも誰かの所有物だとしたら……って、こんなとこにポツンと置いてるわけないかな」
「イムゥ!」
「だよね! じゃ、開けちゃおっと!」
ボブスライムの言葉を理解しているか否か以前に、そもそもどんな返事が返ってこようと開ける気満々だった香織は、迷わず宝箱のフタに手を掛けた。
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