第13話 大きな宝箱と小さな宝

2/5
前へ
/201ページ
次へ
 パカッと音をたてながら開いた宝箱の中は、一瞬何も入っていないんじゃ無いかと思ってしまうほどスッカスカだった。   「……ん? これだけ?」  香織は、下手したら自分自身が中に入ることが出来るんじゃないか、と思えるほど大きな宝箱の中に、ちょこんと置いてある小さな茶色い布袋の存在に気付いた。  あからさまにがっかりした表情を浮かべつつ、その布袋を掴んで持ち上げる。  小銭入れぐらいのサイズ感。  と言うことは、もしかしてお金とかが入ってるのかしら……と、布の上から手で揉んで中身の感触を確かめてみるが、明らかにコインでは無さそう。 「ハズレ箱だったのかなぁ……」  香織はそう呟きながら、布袋の口を開けて中を確認する。 「……おっ? おお!?」  中身を見た瞬間、香織の表情が一変した。  子どものころ、親から貰ったお年玉の入ったポチ袋の厚みが明らかに1枚分しか無く、ああ千円か……と意気消沈したのだが、いざ中身を確かめたら5千円が入っているのに気付いた時に似た表情。   「これは、今の私にはピッタリすぎるお宝──」  その時。  グラグラグラ……と、地面が大きく揺れた。 「えっ、ちょ、ちょっとなに!? 地震!?」  慌てながらも、布袋はしっかりバッグの中にしまい込んだ。  グラグラグラ……揺れはまだ続いている。  香織は咄嗟に、近くの木に生っている葉っぱに目をやった。  こんなに揺れているにもかかわらず、何故かその葉っぱ少しも動いていない。  視線を下に向けると、香織からほんの僅かしか離れていない場所に居るボブスライムは、まったく慌てる素振りを見せず佇んでいる。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加