第13話 大きな宝箱と小さな宝

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「やっぱアレかな? からあげも4個食べたいのをグッと我慢して3個で抑えたり、テレビでやってたヨガエクササイズみたいなの意外と続けてやったりしてるのが功を奏し──」 『うん、そうそう。そうだと思うよ! ねえ、それはそれとして。早くここから出たいんだけどさ。木の扉の上に何か置いてない?』 「うん、あるよ。宝箱。でっかいヤツ。だけど開けて見たら中はスッカスカだったんだけどね。ちっちゃい布袋がちょこんと置いてあるだけで。でもでも、それでがっかりしてたんだけど、中身が──」 『オッケー、後でじっくり聞くからそれ。とりあえずさ、その宝箱って動かせそう? それさえ無ければ外に出られると思うんだけど』 「うん、ちょっと待ってて。試してみる!」  香織は通話を続けたまま携帯をバッグの中に戻し、宝箱に両手を掛けた。 「うぅぅぅぅ」  思いきり力を込めて宝箱を押す。  さすがに、そこそこ大きいだけあってビクともしない……かと思いきや、少しずつ動き始めた。  直樹の言葉に嘘は無く、香織はどちらかというと細身の体型なのだが、負けず嫌いな性格の持ち主だった。  なおかつ褒めて伸びるタイプであり、直樹の後輩からの賛辞が背中を後押しした結果、ジリジリと少しずつ宝箱は地面を滑っていく。   『頑張れ香織~』 『にゃーん!』  バッグの中の携帯と木の扉の下、その両方から直樹とささみのエールが響く。   「んっしょ、んっしょ! もうちょい……いい!」  香織は力と気合いを両手、そして全身に込めた。  すると、お相撲さんよろしく、"宝箱乃山"を木の扉の外まで押し出し、見事勝ち星を挙げることが出来た。  そのまま自分も扉の上から離れつつ、カバンの中の携帯を取り出して結果を報告。 『おお、サンキュ香織! んじゃ、一旦切るよ』  通話が終わるや否やバタンッと木の扉が開き、汗まみれの直樹が顔を覗かせた。 「ふぅ……出た! いやぁ、焦った焦った」 「にゃーん!」  直樹に続き、ささみも階段を上って外に出た。  汗だくの主人とは違い、狭い所が好きな猫らしく、ささみは何事も無かったかのように涼しい顔をしている。
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