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第14話 地獄コースとぬかに釘
「ほら、ちゃんと着いたでしょ?」
香織はドヤ顔で直樹の顔を見た。
「お、おう。まあ確かにウチだなこれは」
直樹は少し悔しそうに答える。
あの地下ダンジョンの入口からここまではそれほど距離があるわけでは無いのだが、一人で戻ってくることができるのか、と聞かれたら、直樹は即座にうんと頷ける自信が無かった。
だからこそ、例によってささみに先導して貰おうとしたのだが、
「私、いけると思う!」
なぜか自信に満ちた香織が代わりに先頭を行く流れになったわけだが、本当に大丈夫かよと訝しがる直樹の心配は良い意味で裏切られ、無事に我が家のリビング前まで戻ってくることができた。
「それじゃ、助けに来てくれる時もすんなり来られたんだ? まあ、あれだな。俺の指示が的確だっ──」
「ううん。スラちゃんが案内してくれたの」
「そ、そう。スラちゃんのおかげだったのか……って、誰?」
香織は、あのふんわりボブスライムとの出会い、きびだんごならぬフィナンシェでお供になってくれたことなどを説明した。
「へえ、そーなんだ。スライムだからって必ずしも敵とは限らないんだな……」
「そうよ。敵どころかすぐに仲良くなっちゃったんだから……って、そう言えばスラちゃんどこ行っちゃったのかなぁ? 着信音に驚いて逃げちゃって……と言うことは、あなたのせいよ? スラちゃん返して!!」
「えっ!? いや、そんなこと言われても……」
うろたえる直樹の姿を見て香織はフフッと笑った。
「にゃにゃっ」
ついでにささみも笑った。
「なんだよもう……じゃあ、ちょっと探してくるか……」
「フフッ、冗談よ冗談! どうせまたすぐに会えそうな気がするし。ねえ、それよりさぁ、ずっと気になってたんだけど、肩から掛けてるその布の袋みたいなのなに? そんなバッグ持ってたっけ?」
「おお、これね。えっと、まずポブロトっていう陽気な商人と会ったことから話さなきゃ──」
ピンポーン。
リビングのガラス越しに我が家のチャイムが鳴る音が聞こえた。
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