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レースゲームで連敗を喫し、ショックを受けていた直樹だったが、からあげの美味しさがその傷を癒やしてくれるような気がしていた。
ちなみに直樹はずっと、年を食ったら自然と食の好みがさっぱりなものに変わっていくと思っていたが、36歳になった今でもからあげやハンバーグ、カレーライスなどが好きなままで、少し恥ずかしく思っていたりなんかしていた。
大人のくせに、何百回と食べてきたくせに、からあげの乗ったお皿が目の前に置かれているだけで、そこはかとない幸福感が心の中を支配する。
救いなのは……と、直樹は目の前に座っている香織を見やった。
自分と同じように、幸せそうな顔でからあげを頬張っている。
そう。香織の好みはほとんど直樹と同じなのである。
違いがあるとすれば、直樹が好きなトマトを香織が苦手としているぐらい。
「ん? どうかした?」
「えっ、いや別に……って、そうそう。スライムの件。あれ結局なんだったの?」
直樹はごまかそうとしてつい口走ってしまったが、子ども達の前で話すと無駄に脱線しそうだな……と後悔したが時すでに遅し。
「なになに!? スライム!? スライムがどうしたの!?」
直樹の隣でからあげを夢中で食べていた歩斗だったが、まんまと聞き逃すこと無くまくし立てた。
「スライム? って、ゲームに出てくるアレ?」
香織の隣でからあげを夢中で食べていた優衣も、まんまと食いついた。
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