第14話 地獄コースとぬかに釘

3/4
前へ
/201ページ
次へ
 休日出勤には大きく分けて二種類ある。  ちょっとだけ人手が足りなくて駆り出される『まったり進行パターン』と、緊急事態による『地獄パターン』。  前者であれば、出勤時間も遅めで仕事内容も単純作業だったりするので、それはそれでわりと楽しめたりしなくもないのだが、後者の場合はまさに地獄。  月曜まで待てないという時点で緊急性の高さを物語っており、出勤時間も通常通りどころか早朝コースまである始末。  そして、予想通り今回は後者だった。  幸い早朝出勤こそ免れたが、日曜なのに時間に縛られて起きなければいけないことは憂鬱以外の何ものでも無い。   「うん、分かった。詳しくは明日」  直樹はテンション駄々下がり丸出しの声で電話を切ると、大きなため息をついた。  ゾンビのように肩を落としながら、ゆっくりと階段を降りていく。  微かにだが、ゾンビのようなうなり声すら上げていた……。 「ねえ、パパ! 庭の冒険行ってきたんでしょ!? どーだったどーだった??」  歩斗は生姜焼きをパクつきながら、キラキラした眼差しを父親に向けた。  家族4人で囲む食卓。  どうやら、子ども達は直樹が寝ている間に香織から概要だけ知らされていたようだった。  もちろん、直樹は異世界での冒険譚を話す気満々。  空飛ぶドラゴンを見たこと、陽気な商人に会ったこと、地下ダンジョンに入ったことなどなど、生姜焼きを食べ終えてもまだ残ってるほど話のボリュームは豊富にある。  紫スライムを倒したのがささみでは無く自分だった的な捏造も交えつつ、臨場感豊かに語るつもりであった……あの電話するまでは。  当たり前だが子ども達に罪は無いし、仕事なんだから仕方が無いというのも承知の上で、それでもやはりテンションダウンは不可避。  とは言え、何も話さないというのはあまりにも可愛そうってことで、直樹は今日の出来事をかなりざっくりまとめた上で説明した。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加