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「うーん、どうしよっか……」
歩斗は、今さら武器も何も持ってきて無いことに不安を感じていた。
父は、この階段を降りた先に地下ダンジョンがあって、スライムとバトルになったと言っていた。
魔法の杖の攻撃で勝ったみたいだが、それに比べて今の自分は手ぶらも手ぶら。
やれる攻撃と言ったら、魔法ポーションが入っていたビンで殴りかかる、といったぐらいなもので当然不安は大きいのだが、それよりも好奇心が上回る。
若さというか幼さというか、手ぶらの勇者はイソイソと地下ダンジョンに続く階段を降りていった。
扉に貼り付けられたプレートには『ランダム生成系地下ダンジョンレベル12入口』と書かれていた。
それは、直樹が入ったものよりもかなり難易度が高いことをちゃんと示してくれていたことには気付かないまま……。
「おお、広い!」
階段を降りきった先には、だだっ広い部屋があった。
しかも、前方と左右それぞれの壁には、別の部屋に続いてると思しき通路も見える。
直樹が挑戦したダンジョンがワンルームだったことと比べると、とても大きな違いだが、初挑戦の歩斗がその点に気付くはずも無かった。
計り知れない怖さは感じつつ、何かあってもすぐに階段を上って逃げればいいや……という謎の安心感を携えながら、歩斗はゆっくり部屋の中を進んで行った。
すると突然──。
「ガオォォォォォ! ガオガオガオォォォォォ!」
どこからともなく、けたたましい雄叫びが部屋中に鳴り響いた。
「うわっ! な、な、なんだ……!?」
大きな叫び声の威圧感にやられ、思わず目を瞑って体をのけぞらせる歩斗。
そしてすぐに瞼を開くと、目の前にライオンのような魔物の姿が。
「ひぃぃぃ!」
歩斗は、たまらず情け無い悲鳴を上げてしまった。
優衣にこの姿を見られなくて良かった……と、安堵してる余裕など1ミリも無い。
なんてったって、ライオンのような魔物が吠える口元は歩斗の頭より遙かに大きく、気分次第でパクッと簡単にいかれてしまってもおかしくなかったのだ。
当初の予定通り、何かあったのだからすぐに階段を上って逃げなければと頭の中では分かっているのに、体が強ばって足がまったく動かない。
すると、魔物の4本足がジリジリと歩斗に向かって動き始めた。
マジでヤバい。
このままだとあっという間に殺されちゃう──
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