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「ガオォォォ!!」
それまでゆったりとした動きを見せていたライオン魔物が、突然ギアをチェンジしたかのように歩斗に向かって突進し始めた。
「ひぃぃうわぁぁぁぁぁ!」
声をあげることしかできない歩斗。
そしてついに、大きく開いた魔物の口が歩斗の頭をロックオンした……刹那。
「とりゃ! くらえっ!」
突然、歩斗の背後から駆け寄ってきた何者かが、歩斗の横に来たところで声をあげながら前方に大ジャンプ!
綺麗な跳び蹴りが魔物の体にクリーンヒットし『36』という数字煙が飛び出した。
「ガオォ……ガァァァァ……ァァ……」
バタンッ。
力なく倒れた魔物の姿がスーッと消え、代わりに綺麗な紫色の宝箱が出現。
「えっ……えっ、一体なにがどう……」
歩斗は戸惑いながら、跳び蹴りを繰り出した何者かの姿を確認した。
そこには、歩斗と同じぐらいの背丈の少女が立っていた。
鮮やかな緑色の髪。
大きな目、薄い唇、猫のような三角形の耳。
チューブトップ風のワイルドな布の服に、これまたワイルドなショートパンツ。
それが小麦色の肌と絶妙にマッチしていた。
凄く気が強そうだけどビックリするほど可愛い
……それが、その少女に対する歩斗の第一印象だった。
少女は胸の前で両腕を組み、ドヤ顔で仁王立ちしている。
「えっと……ありがとう、助けてくれて」
どこの誰だかまったく分からないが、とにかく助けてもらったことには変わらないと、歩斗はまず感謝の言葉を口にした。
「いいよ、別に。でも、あんた多分まだレベル1でしょ? 無謀にも程があるよね」
少女は呆れ顔で返した。
「えっ、あ、はは、確かにその通りだよな。逃げればいいやって余裕ぶっこいてた、へへへ」
歩斗は屈託の無い笑顔を見せながら頭をポリポリとかいた。
「あっ、すごい。格好つけないとか格好いいんだけど」
「……へっ??」
「だって、女の子に助けられたら普通……って、ねえ、あなた名前なんて言うの?」
「ボク……は、歩斗。涼坂歩斗だけど」
何となく顔を赤らめつつ、質問に答える歩斗。
「アユト……ね」
「うん、そうだけど。じゃあキミは?」
「私? 私は……ユセリ。魔物の国の戦士さ」
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