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第16話 魔物召喚スキルチョーカー
「えっ、マモノの国の戦士!?」
歩斗は驚きに満ちた目で、突然現れたユセリという名の少女を見た。
確かに、耳や手なんかは魔物……というか猫というか、少し人間離れしているように見えたものの、全体のベースは人間の女の子といった雰囲気。
そして、年齢(魔物齢?)は自分とあまり変わらなさそ──
「なにジロジロ見てんの? 跳び蹴り食らいたい?」
ユセリはギロリと鋭い眼差しを歩斗に向けた。
「ちょ、ちょっと、いらないっていらないって!」
歩斗は、あんなヤバそうなライオンタイプの魔物を、たったの一発で仕留めたユセリの攻撃を思い出して本気で焦った。
「冗談、冗談。っていうか、せっかく宝箱出たんだから開けて見なよ」
「お、おう。って、ボクが開けちゃっても良い感じ? 倒したのはキミだけど……」
「良いんだよ! このダンジョン見つけたのアンタでしょ? なに、もしかして開けるの怖いんじゃないの?」
ユセリは、歩斗の技量を推し量るのようにジーッと流し目を送った。
「え、んなことねーし! 宝箱とか開けまくってるし余裕だし!」
もちろん、これが生まれて初めての宝箱開けであり、嘘丸出し。
正直、図星を突かれたが故の反発だったのだが、魔物とは言え女の子の前でかっこ悪い姿を見せるのは男がすたるとばかりに、歩斗は下手な口笛なんか吹きながらゆっくりと宝箱に近づいて行った。
昨晩、優衣とささみと見つけた宝箱とは見た目からして全然違っていた。
目の前にある紫色の宝箱には複雑な模様の装飾が施されており、中にとても良いお宝が入ってそうに思えるのと同時に、逆にその豪華さがトラップのようにも見える。
とは言え、背後から自分を試すような鋭い視線をひしひしと感じていた歩斗は、悪いイメージを無理矢理振り払い、そっと宝箱を開けてみた。
持ち上げたフタは重量感があるのだが、自動開閉機能が備わってるんじゃないかと思えるほどスッと開いた。
「ねえねえ、なに入ってた?」
ユセリはそう言いながら、タッタッタッと軽い足取りで宝箱の元へと駆け寄り、歩斗の隣でピタッと止まった。
宝箱を開けるのと同時にユセリの心の扉も開いたかのように、厳しい目つきは影を潜め、代わりに好奇心の輝きを帯びていた。
歩斗は、今にもお互いの腕がくっつきそうなぐらいの距離感にドキッとしつつ、宝箱の中身を確認する。
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