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「いや、謝ること無いって。地下ダンジョンで死んじゃうなんて自己責任なんだし……って、やだな、なんか調子狂う。いつもクールな私が……」
「えっ?」
「あ、別に、何でも無い何でも無い! それよりさ、試したいんでしょそれ」
ユセリは歩斗の首元に視線を送った。
「うん、試したい! 地上に居るヤツを探すんだよね? どこに行けば居るかなぁ」
切り替えの早さという生来の特殊スキルを発動した歩斗は、キラキラと目を輝かせて周りをキョロキョロ見回した。
ここは異世界の森の中。
どこからでも魔物が飛び出してきそうな雰囲気が漂っているものの、いざ自分から探そうとした時には全然出てきてくれないんじゃ無いかとも思えた。
「その辺適当に歩いてればすぐ見つかるでしょ。まっ、私みたいに可愛いのはレアだけど」
「……えっ?」
ふいに飛び出した言葉に驚いた歩斗は、つい真顔でユセリの方を見てしまった。
「な、なによ!? 冗談だって冗談! 私がそんなの言うなんて珍しいんだから、ありがたく貰っておきなさいよ! っていうか、ツッコむならちゃんとツッコんでよね! なんか恥ずかしくなっちゃうじゃんか」
ユセリの焦った顔がどんどん赤くなっていく。
歩斗だって、はっきりボケてるって分かったのであればちゃんとツッコむお約束は心得てるし、なんなら学校ではどちらかと言えばツッコミ役だという自負もある。
逆に、家では妹にツッコミを入れられることの方が多いが……。
とにかく、そんな歩斗がツッコむ前に変な間ができてしまったのは、取りも直さずユセリが言ったボケがボケだと分かりづらかったからに他ならない。
つまり、単純に可愛い──
「もう、ジロジロ見ないでよ! ほら、仲間にする魔物を探しに行くよ!」
「……お、おう!」
微妙な空気の膜を突き破るように、二人は森の中を歩き始めた。
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