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第18話 光葉樹と紙グラス
ロフレアだのなんだの色々と気になるワードが出てきて、ユセリからもっと色々な話を聞きたかった歩斗だったが、まずはせっかく現れてくれた丁寧なスライムの件を優先しようと思った。
「あのさ、用事があるみたいでアレなんだけど、仲間に……なってくれない?」
果たしてこんな頼み方で良いのだろうかと不安を抱きつつ、不自然なぐらい首に付けたスキルチョーカーをアピールしながら聞いてみる。
「あ、それは! じゃあ、お願いを聞いて貰っても良いでしょうかイムゥ?」
効果てきめん。
水色のスライムは魔物召喚スキルチョーカーを見た瞬間、全てを察したらしく、早速"願い事クエスト"を出してくれた。
「うんうん! もちろん聞くよ!」
キラキラと目を輝かせる歩斗を見て、ユセリはフフッと笑った。
「じゃあ、お願いですイム。実は、さっき言った用事というのは〈ナオルナの実〉というものを探すことだったんですイム」
「ほうほう」
と、相槌を打ってみた歩斗だったが、もちろんそんな実のことなど何も知らない。
こっちの世界に来てから未知との出会いばかりで、知らない言葉が飛び出すことに慣れて来ているのもあり、とにかく話を聞くことの大切さを自然と身に付けていた。
「個人的な話で恐縮ですが、私の妹が少し前にケガをしていまったんですイム。それで、ケガを治す効果がある〈ナオルナの実〉が必要というわけですイム」
スライムのポップな見た目と丁寧な口調のギャップに違和感を覚えざるを得ない歩斗だったが、話の内容に関しては身につまされるものがあった。
「よし、わかった! ボクがすぐ見つけてきてあげるよ!」
「おお、本当ですかイムぅ! 助かりますイム!!」
「うん。実はボクも妹がいるからね。……って言っても、アイツはちょっとやそっとのケガじゃ寝れば治るって言い張るぐらい強いけど」
歩斗が笑うと、スライムもイムイムッと笑みをこぼした。
妹を持つ兄同士、相通じるものを感じているようだ。
その様子を見ていたユセリの目が一瞬寂しさを漂わせたのだが、魔物と仲間になるためのクエストに夢中な歩斗はそれにまったく気付かなかった。
そして、その目はすぐに元のクールな眼差しに戻った。
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