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「ナオルナの実か……この辺じゃあまり見ないような気がするけど。ねえ……アンタ名前なんて言うの?」
「申し遅れましたイム! 私の名前はスララスと申しますイム!」
「うん、じゃあスララス。元々、自分でその実を探しに来てたんだよね? ってことは、この辺にあるってこと?」
鋭い質問をぶつけるユセリ。
あっ、それ自分が言いたかった……と、歩斗は悔しがると同時に、身軽でパワーもあっておまけにかしこさまで兼ね備えているユセリに感心していた。
「そうなんですイム。普段あまりこの辺に来る事は無いんですけど、ナオルナの実があるっていう噂を聞いたもんでイム。でも、恥ずかしながらその実を見たことが無くて、どんな形をしていてどんな風に生っているのかも知らなくて、正直苦戦していたところですイム……」
スララスは水滴のようなカラダ全体をだるんとさせた。
「ならちょうど良いよ! ボクたちが見つけてきてあげるから。ねっ、ユセリ?」
「うん。私もそんなにナオルナの実に詳しいわけじゃないんだけど、確か〈光葉樹〉だったってことだけは何となく覚えてる」
「コウヨウジュ……?」
前に理科の授業でそんなの聞いたような……と、歩斗は頭を捻った。
「知らない? 葉っぱがパァァって光る木」
「えっ、光るの? クリスマスとかの時みたいなやつ?」
「クリスマス……? それこそなに?」
「えっ、クリスマス知らないの? えっとねぇ……」
腰を据えて説明しようとした歩斗だったが、無言で何かを訴えかけてくるスララスの視線に気付き、何よりもまず探し始めた方が良いような気がした。
「まっ、とりあえず光ってる木を探せば良いんだよね?」
「そうそう。とりあえず探してみようよ」
「おう、じゃあ行こう! 急いで取ってくるから待っててねスララス!」
「はイム! お願いしますイム!」
そう言ってスララスは手……ではなく、カラダの端っこギューッと伸ばしてプルプルと振ってみせた。
「じゃあえっと……こっち行ってみよう!」
歩斗は、少なくともここに来るまでは光る木など見てないことを踏まえて、自宅のある方向とは別の方へと歩き始める。
そして、そのすぐ隣をユセリがぴょんぴょん跳びはねるように付いてきた。
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