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「おお、ホントに光ってる! っていうかまぶし過ぎ!!」
歩斗は、目の前で煌々と光輝く大木に感動しつつ、まるで太陽のような輝きに耐えかねて目を伏せた。
森の中で多少暗さもあるとは言え、昼間の時間に光る木を見分けることなんてできるのか……と思いながら歩いていると、一瞬でソレとわかる輝きに遭遇した。
「ほんとスゴい! 今まで何度か光葉樹見たことあるけど、ここまでまぶしいのは初めて! っていうか、目がヤバい目が」
ユセリは歩斗にも増して輝きにやられているようだった。
「なあ、大丈夫?」
歩斗は、あまりに苦しそうにしているユセリを心配して声をかけた。
「うん、猫系魔物のハーフだから目が良すぎるのかな」
ユセリはそう言うと、無理して余裕を見せるかのようにフフッと笑った。
「えっ、ハーフなの?」
歩斗は初耳な言葉を聞くなり、マジマジとユセリの顔を覗き込む。
「ちょ、ちょっと、あんましジロジロ見ないでよ!」
ユセリはほんのり顔を赤らめながら、手を伸ばして歩斗を振り払おうとした。
「あっ、ごめん」
なんとなく、それは踏み込んで聞いちゃいけない事なのかな……と子どもながらに思った歩斗は、話の筋を元に戻すことにした。
「それで、これがスララスの言ってた〈ナオルナの実〉が生ってる木なのかな?」
「う、うーん……どうかな。もう、とにかくまぶしすぎて何にも見えないから分かんないよ」
もはや、光に耐えかねたユセリはその木に背を向けている。
それに比べて歩斗はと言えば、頑張れば見ることが出来た。
ただ、何年か前にあった皆既日食の日に母の香織から「お日様を絶対直接見ちゃだめよ! 失明しちゃうから!」と言われて、失明という言葉の恐ろしさが体に染みついているせいか、強い光に対し、ついつい反射的に目を逸らしてしまって具体的なところまで見ることは出来ていない。
「でも、怪しいなぁこれ……」
両手を腰に当てて考え込む歩斗。
そう言えば結局あの日、ちゃんと太陽が月に食べられていくのを見ることができたんだよな……と、思い出をたぐり寄せていた歩斗はハッとした。
「そうだ! アレだ!」
隣で突然大声を出されたユセリは驚いて体をビクッとさせた。
「な、なに!? アレって??」
「うん、ちょっとここで待ってて! すぐ戻ってくるから!」
そう言い残すと、歩斗はそれこそ猫のような軽やかなステップで、ここまで来た道を駆け戻っていった。
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