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第19話 パーティー結成!
「ほらこれ! 武器ゲット!」
歩斗は、宝箱の中から弓と矢が入った筒を取りだすと、後ろに居るユセリに向かって高々と掲げて見せた。
「おっ、やったじゃん。こっち持ってきてみ」
相変わらず光を避けて背中を向けたまま答えるユセリ。
歩斗は誇らしげに弓矢を持って彼女の元に帰還する。
「どうよこれ!」
骨董品を鑑定してもらうかのように、歩斗は弓矢をユセリに見せてみた。
「うーん……まあ、普通の〈木の弓矢〉だね」
「お、おう……」
率直な鑑定結果に多少がっかりした歩斗だったが、紙のサングラスを外してみると、確かにユセリの言うとおり、木で出来た弓矢以外の何ものでもないように見えた。
それはともかく、弓矢を見た瞬間に歩斗の脳裏にはあるアイデアが思い浮かんでいた。
「ねえ、これさえ使えば、あの実を取ることできそうだと思うんだけど……どうかな?」
歩斗は再びサングラスをかけて、光の木を見上げた。
「あっ、いいねそれ! やってみなよ!」
「うん!」
どことなく、"早くこの眩しい場所から退散したい感"を漂わせたユセリの言葉だったのだが、単純に同意を得られたことに喜びを覚えた歩斗は、ホクホクな笑顔を浮かべながら左手で弓を構え、筒の中から矢を一本取りだした。
「よし、じゃあ軽く一発……って、どーやんのこれ!?」
いざ構えてみると、思いのほか指の置き場所や手の動きなど細かい部分が定まらず、困った歩斗はユセリにアドバイスを求めた。
「どーやるって……そりゃ、弦に矢を引っかけて弓を前に矢を後ろにグーッと引っ張ってパッと放せば飛ぶから」
「うーん、そんな感じなのは大体わかってるんだけど……」
ユセリのやけっぱちな助言に戸惑う歩斗。
それを感じ取ったのか、ユセリの表情が少し変わった。
「なんかさ、アユトって弓矢の天才って感じがすごいするんだよね。顔つきとかさ。だからとりあえず撃ってみたらもしかして──」
「ま、マジ!? よっしゃ、やってみる!」
褒め殺しという名のユセリの二の矢は見事に歩斗の図星を突いた。
とは言え、結局のところ技術的なアドバイスはゼロに等しいのだが、なぜか弓矢を構える歩斗の姿はなかなかどうして様になっていた。
そして、歩斗は弦をギリギリときしませながら限界まで矢を引き、弓を動かして矢尻をナオルナの実へと向ける。
本当に弓矢の才能があるかどうかは定かでは無いものの、褒めて伸びるタイプ丸出しの歩斗はユセリの言葉を自信に変え、落ち着いた手つきで矢尻を丸い実に重なる。
「今だ! えい!」
気合いのこもった声をあげながら、矢を掴んでいた右手をバッと広げると、空気を切り裂く音がした。
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