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本当に弓矢の才能があるかどうかは定かでは無いものの、褒めて伸びるタイプ丸出しの歩斗はユセリの言葉を自信に変え、落ち着いた手つきで矢尻を丸い実に重なる。
「今だ! えい!」
気合いのこもった声をあげながら、矢を掴んでいた右手をバッと広げると、空気を切り裂く音がした。
解き放たれた木の矢は、鳥が獲物を狙うが如く、一直線にターゲットへ向かって飛んで行く。
そして……ボトッ。
才能か奇跡か偶然か、歩斗が放った一本の矢が見事に茎を射抜き、ナオルナの実が地面に降りてきてくれた。
「お……おお! やったぁ! やったぞ!!」
両手を上げて喜ぶ歩斗。
そのはしゃぎっぷりは天才に似つかわしくなかったものの、どこぞの弓道部の監督か、
弓使いを仲間にしたがっている勇者がこの場にいたら、迷わずスカウトしたに違いない。
「これが……ナオルナの実! よっしゃ、ゲットォォ!!」
歩斗はハイテンションのまま地面に落ちた黄緑色の丸い実を拾い上げると、得意満面で高々と掲げた。
「えっ、上手くいったの? や、やるぅ~」
ユセリは、まさかといった表情で歩斗の勝ち鬨に目をパチクリさせていた。
彼女が名コーチかどうかはさておき、歩斗の力を引き出した原動力であったことは間違い無い。
とにもかくにも、目的を果たした二人は光の地を後にして、クエストの依頼者スララスの元へと戻ることにした。
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