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「なーんもないなぁ。スライムも出てこないし、宝箱も無いし……って、そういえば、昨日はささみが見つけてくれたんだっけ。ささみと一緒に来れば良かった~ミスった~」
そんな嘆きを吐き捨てながら、優衣は静かな森を歩き続けていた。
リビングから向かって左、つまり人間の国ロフレアがある方角。
だが、もちろん優衣はまだそんな事など知りもせず、ただなんとなくブラブラと歩を進めていた。
最初に宝箱を見つけたのがリビングから向かって右の方だったせいか、直樹も歩斗もその方向を探索していたため、優衣は涼坂家として"未開の地"を切り拓いている。
「おーい、スライムやーい。出ておいで~……って、ホントに出てきたらどうしたら良いんだろう……? 武器とかなんも無いし……パンチか」
優衣が独り言をつぶやきながら、シュッシュッとシャドーボクシングのようにパンチを繰り出していたその時。
「……おっ? ……おおっ!」
まばらに木の生えた森の景色の奥の方に、違和感一杯の物体が見えた。
「よっ、よっ、よっ!」
ご機嫌な声を出しながら、ピョンピョンと跳ねるようにソレに向かって駆け寄る優衣。
「これは……絶対宝箱でしょ!!」
数メートル手前に来てはっきりそれが宝箱だと分かった瞬間、優衣はグッと右手でガッツポーズを作った。
ささみに頼らなくても見つけられた喜び。
中には何が入ってるかな?
すぐ戻って歩斗に自慢しようか?
いや、もっと行けばもっと見つかるかもしれないよね……まだ見ぬ箱の中身の皮算用をしていた優衣の目の前に、それは突然現れた。
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