61人が本棚に入れています
本棚に追加
第21話 ピンクゴールドの剣
「ほら、これ使って!」
見知らぬ少年は爽やかな笑顔を浮かべながら、ピンクゴールドの剣を優衣に向かってポンッと投げた。
「えっ?」
なにこの突然現れた金髪くせ毛イケメン野郎は……と、戸惑いながらも、優衣は剣の柄を器用にキャッチ。
生まれてこの方、生の剣というものを見たこともなければ当然持つ機会も無かったのだが、なぜか手に馴染むような感覚を覚えた。
「えっと、よく分からないけどありがと──」
少年に顔を向けたまま律儀にお礼を言おうとしたその時。
「ズネズネェェ!! シャァァァァ!!」
隙あり、とばかりにオオネズミが優衣に向かって襲いかかる。
「ほら、来てるよ!!」
「あ、うわっ!」
少年の声にハッとなった優衣が顔の向きを元に戻すと、すでにオオネズミは目の前まで来ていた。
「キャー!! ……なんてね~。調子に乗って襲ってきたりなんかする子はこうだよ!」
優衣はニコッと笑いながら、少年から貰った剣を振り上げた。
それを見たオオネズミやギョッと怯んだものの、突進した勢いを急に止めることはできず、そのまま優衣に向かっていく。
「えいっ!」
優衣は、初めてとは思えないほど見事な剣攻撃を、オオネズミの体に食らわせた。
「ズネェェェェェ……ズ……ネ……」
断末魔の叫びを上げるオオネズミの体から『11』の煙が出ると同時に、銀貨3枚に姿が変わった。
「いえーい!」
魔物との初バトルで圧勝を収めた優衣は、右手に持ったピンクゴールドの剣を天高く掲げ、左手で作ったピースを真っ直ぐ前に突きだした。
パチパチパチ。
勝利報酬の銀貨を拾おうとした優衣の背後から、拍手の音。
「凄いねキミ!」
優衣に剣を渡した少年は、驚き半分、感心半分といった表情を浮かべていた。
優衣は軽やかに振り向き、
「どういたしまして!」
と言いながらニコッと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!