潮騒と息の音

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 僕が見える。学生時代の僕には、友達がいなかった。人並みにできることもほとんどなかった。病弱で、学校行事や修学旅行にも行けなかった。 体育では、僕がいると戦力がマイナスになるからと忌み嫌われ、僕が少しでもミスをすると苛烈な罵声を浴びせられた。僕がサッカーをやっている時に、ボールを取られるという、よくある光景が浮かんだ。 「お前なんかやっぱりいらねぇ!」 そんなこと分かっている。自分でも僕は、いらないと知っている。でも、平等を謳う学校生活では、僕もまた逃げられなかった。  勉強もロクに手がつかなかった。学生時代に、同年代がやるような楽しいことは何一つしていない。僕と話す人は、ほとんどいなかった。やはり、一緒に外に遊びに行くような友達もできなかった。正直寂しかったけれど、慣れてしまった。友達がいないのは、まだいい。僕を攻撃してくる奴がいるのが、もっと辛い。何かと学生たちの不満のはけ口にされた。何かあればすぐに僕のせいになった。クラスメイトが勝手に金を集めて失敗した文化祭の準備も僕のせいにされて、僕はしょうがなくバイト代を稼いで、大嫌いなクラスメイトたちに金を貢ぐ羽目になった。  結局何年か浪人しても大学へは行けなかった。自分の頭の悪さを嘆いた。引きこもりを経験した後に、しょうがなく就職した工場で、不器用な僕はやはり、上司に怒鳴られ続け、収入もほとんどもらえなかった。そんな生活に嫌気がさして、また引きこもった。  僕が一番嫌だったことは、否定され続け、いつしか自分の人生を生きられなくなったことだ。自由意志がなくなり、無難に無難に、人に否定されないように、と思い続けたら、人の顔色を伺い続け、同級生に媚を売り続け、自我というものがなくなったように感じられた。思春期を経て、自分の意志なんてものは何一つなくなってしまった。自分のやりたいことなんて、10代の頃から何もしていなかった。僕の自我の弱さゆえか。弱い人間は消えていく、お前のような人間は淘汰される、お前のような人間の遺伝子が消えることが人類の進化に貢献するとさえ言われた。僕には確かに要領の悪さや、身体、精神的な不器用さ、愚鈍さがあった。人のために顔色を伺って、ご機嫌を取り続けたつもりなのに、誰も僕のことなんて好きになってくれなかった。
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