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今まで私たちは、四人で頑張ってきた。
でも今、澤田先輩が離脱して結花ちゃんがそれを守ってる。だったら、私たちも二人でこのチームをきちんと維持していかなきゃいけないんだ。
それも、私たち以外の部員にはできるだけ、澤田先輩が欠けていることを意識させないように。奮起の理由になるならいいけれど、不安のもとには絶対にさせちゃいけない。
本当に疲れたら、休んでくれたっていい。
その時は、私も北見先輩のためになんだってするけれど…今は、まだその時じゃないと思うから。北見先輩の強さを信じて、まだ行けるはずだと先を示すのが私の仕事。
北見先輩が、澤田先輩の帰りを待つと言うなら尚のこと。
帰ってきたときにチームががたついていたんじゃ、合わせる顔がないでしょう?
「殿前は、キャプテンが試合をリードするチームです。
いつまでもキャプテン不在のままじゃ、よくないと思います。
…どうしても北見先輩の気持ちが納得しないなら、副キャプテンを空席にしておいたらどうですか?
澤田先輩の場所を、自分の心の中に作っておきたいなら、そうすればいい。
でもチームメイトに対しては、北見先輩が澤田先輩の代わり…ううん、二人分の安心感を与えなきゃいけないでしょう?」
特に後輩に対して、不安材料を見せてはいけない。
グランドから離れたら、私でよければいくらでも…愚痴も聞くし不安も受け止める。グランドではきっと、木田君が北見先輩を支えるつもりでいてくれてる。
でもみんなの前にいるときは、北見先輩が絶対的なリーダーでいてください。
そんなことを伝えたら、北見先輩に笑われた。
この人がくったくなく声を上げて笑う姿を見るのは、そんなによくあることじゃない。
近い距離で見たその笑顔は、意外と幼くて…
なぜかちょっとだけ、ドキッとした。
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