プロローグ

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私のとりえは、基本的に明るくて元気なこと。 そして、真面目にコツコツと努力できるところだと思う。 何かとびぬけて得意なことっていうのはないけれど、勉強もサッカーも、基礎をしっかり固めて続けていれば、ある程度まではできるようになった。 自分が一番目立たなくても構わない。むしろ、中学時代にキャプテンを任されたことの方が私の人生の中ではイレギュラーだった。 これからは、裏方として…サッカー部を支えていきたいな。 そんなことを思いながら、新しい制服を眺めてワクワクしながら春休みを過ごした。 そして迎えた4月6日。 新しい制服に身を包み、説明会のときと入試のときに入っただけの、慣れない校舎に脚を踏み入れた。 ここが、これから三年間通う学び舎…のはずなんだけど、まだまだお客様気分が抜けない。 私の所属する特進A組は、ほかのクラスとは入試の形態が違う。 特進クラス志望の募集枠があって、もしそこに入れなくても一般クラスで拾ってもらえる可能性がある…っていう感じ。 中学からの指定校推薦枠も、特進には設けていないから、A組の子は全員一般入試で点を取って合格したってこと。 だから、一般クラスよりも成績のいい人が集まっていて、大学もある程度以上のところに行くことが前提みたいになっている。 多くのクラスメートは部活にも入らないみたい。 入学式が始まる前のHRも、当然のようにし~んとしてて、みんな真面目に担任の先生の話を聞いている。言われたとおりに整列して移動して、体育館では指示通り立って礼をして座って…の繰り返し。 …このクラスで友達って、できるのかな。 そんな不安が沸いてくるくらい、緊張感が張り詰めていた。 私も人のことは言えないくらい緊張していて、元々おしゃべり好きというわけでもないから、誰かが話しかけてくれたら応じるんだけど…という感じ。 もしかしてみんなそうなのかな。 この感じのままで、みんな勉強だけを一生懸命にやるのかな。 だけど、せっかくの高校時代を、勉強だけしかしないなんてもったいないと、私は思うのよね。 幸い一人で行動するのは得意な方だから、つるむ人がいなくても全然かまわない。今日から、部活見学ができるって先生が言ってたから、まずはサッカー部を見に行ってみようと思う。
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