気のせい

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改札口から君を見つけた。 両手には大きなビニール袋をぶら下げて、えっちらおっちらと緩やかだけれど長い坂道を歩いている君を見つけたよ。 僕はしばらくたってから君の隣に並んだ。 すぐに助けなくてごめんよ。一生懸命な背中が可愛くて見惚れてしまったんだ。 片方持つから許しておくれ。いや、少しはもう片方に入っているものも入れていいから。 全部は持たないよ。だって僕らは対等なんだから。お互いの適量を持っていこう。 君が持てない分は僕が持つ。だから、僕の持てない分は君にも手伝ってほしい。 二人でも持てない分は誰かにお願いしよう。僕らは二人で生きているわけじゃないんだから、意地を張らずに頭を下げよう。 それだけで予想もしない大きなものを手に入れることができるんだ。それは質量の意味なのかもしれないし、計ることのできない夢や可能性だったりするかもしれない。 任せっきりじゃあだめだよ。自分で何もしなかった人は一つももらえないからね。 さあ、家に帰ろう。 帰って、袋の中にある材料でご飯を作って、二人で乾杯しよう。 考えただけで、少し軽くなった気はしないかい? 僕だけの気のせいかな。
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