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その言葉に全員が固まった。ブンタも「そういえばそうだ」と小さく言う。そして中からガタン、と音がした。皆漫画のようにびくりと飛び跳ねる。
嫌な想像をしたのだろう。さっきのヒジリがいた部屋とこの場所は距離的に近い。
もし、本当に「誰か」がこの家にいて。
この部屋に入り込んで。
中から、扉を押さえていたら…?
ユタカが後ずさりをし、ブンタもユウカもじりじりとその場を離れる。そして蜘蛛の子を散らすように一斉に走り出した。慣れない場所なので玄関への行き方を間違え廊下に出てしまう。一人がそちらに向かえば条件反射で全員そっちへと走ってしまうのだ。
走ってたどり着いたのは俺が調べ物をしていた書斎だった。外に出られなかったことにユタカたちは一瞬戸惑ったようだが、俺のスマホある、と言うとそれはそれで結果オーライだとなった。
しかしどれだけ部屋の中を探しても、見つからない。確かに机の上に置いていたはずなのだが。
「盗まれたのかな」
そんなことを言えばユウカはもう涙目だ。恐怖がピークになっているのだろう。
「余計な事言って混乱させるな、ウゼエ」
ユタカが吐き捨てるように言ってくる。
「じゃあ何でないんだよ」
冷静にそう返せば舌打ちをしてそっぽを向かれた。苛つくなら話しかけなきゃいいのに。
こうしていても仕方ないのでとりあえずここから出て直接助けを呼びに行こうという事になった。警察が捜査すればスマホも見つかるはずだ。
ふと、ブンタが机の上に乗っている本を手に取る。俺がさっきまで見ていた本だ。タイトルが気になったのだろう。
「これ鬼に関する本?」
「さっきまで読んでた。なんかこの地方の風習とか書いてある」
「何で風習に鬼が出てくるの? そういえばタツキ君って鬼について調べたいから今回参加したんだっけ」
「ああ、ネットには情報なかったから。古くから鬼が出るっていう言い伝えがあるみたいだ。鬼の宿って書いて、たぶんそのままきしゅくって読むんだろうけど、ここはあの世からやってきた鬼が滞在する場所っぽい」
先ほどまでの出来事と今の伝承を組み合わせれば、1+1よりも簡単な式と答えが導き出される。さっきの出来事は、鬼の仕業ではないか…? 興味なさげにそっぽを向いているユタカでさえ、ちらちらと目線だけこちらによこしているのがわかる。
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