鬼宿

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ユタカとは大学でほぼ会話したことがない、ブンタの友達、という認識だ。ほぼ関わりがなかったとは言ってもここまでの道中、車の中で自分の自慢話が多く自信にあふれた性格なんだなというのがみて取れた。  海外育ちなせいか受け身ではなく活発なタイプらしく頭もいいようで、いくつかの国家資格保有とボランティア活動などもしているらしい。まあ、要するに自分は他の奴とは違うと言う割と高めのプライドを持っているのだ。そんな奴に正論からの図星をさせばどうなるかなど、想像するのもあほらしい。  案の定、ユタカとユウカが軽い口論となりブンタが仲裁するという形が出来上がる。  うるさいなあと思いながら本を数冊ピックアップする。一人そんな行動をしているのがなお気に入らなかったのだろう。ユタカの表情が怒りに変わっていき、最終的に。 「じゃあお前らはここで殺されるの待ってろよ! だいたい鬼の弱点なんて都合がいいもんが載ってたらな、今頃あいつはいねえだろうが! どうせこんな特徴ですみたいな説明文だけで終わりだよ! 頭悪いのはそっちだろうが、現実的にここから逃げ出す方法考えろ!」  そう吐き捨て、ちゃっかり俺のLEDライトをもって部屋を出た。 「ああいうの死亡フラグって言うんだけどな」 「タツキ、冗談でも今それ言うな」  険しい顔でブンタに注意をされてはいはい、と適当に相槌を打つ。ユウカといえば、口論の中になんでお前みたいなブスがヒジリと友達なんだと言われたことに怒り心頭のようで、死ね! と叫んで扉をしめた。ブンタに、目線で今の発言に注意は? と促せば小さく首を振る。そりゃそうか、今言ったらヒステリー起こしかねない。 「お前は追いかけてやれば、友達だろ」 「いや、いい。頭に血のぼったら何言っても聞かねえんだよ。冷静な時は良い奴なんだけどな」  それって冷静な時しかイイ奴じゃないってことじゃん、友達は選べ。まあ何はともあれ、俺とブンタは友達じゃないがブンタとユタカは友達ならこう言ってやらなきゃな。 「次に会ったとき、死体になってても同じこと言えるか」  淡々とそう言うと、ブンタは驚いたように俺を見た。少し売り言葉に買い言葉を言った自覚はあるのだろう、迷ったように目が泳ぐ。いつ誰が死ぬかわからない状況だ。あの時ああしていれば、と後悔しても遅い。 「本は俺が読むから」  そう言うと、悪いな、と言って部屋を出た。俺たちの会話を聞いていたユウカは何も言わず見送る。そうして沈黙が訪れた。俺は黙々と本を読んでいるし、ユウカはやることがないので黙って待ってる。手持無沙汰で、緊張していてもじもじと小刻みに動いたりその辺の物をいじったりしていた。 「あ、あのさあ」  思い切って、という感じでユウカが話しかけてくる。沈黙に耐えられなかったのだろう。顔をあげると、ぱっと笑顔になる。反応したことが嬉しかったようだ。 「タツキ君って何で鬼について調べてるの」 「興味がわいたから」 「あ、そうなんだ……」  俺のしゃべりは基本一問一答形式だ、相手とのコミュニケーションを広げるために聞き返すようなことはしない。話題がなくなって気まずくなったのか、立ち上がって本棚に近づく。しかしほとんど興味がないタイトルだったようでふらふらと歩くだけだ。
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