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百面鬼のページをまじまじと見ながら目を白黒させた様子で俺を見る。俺はそんなブンタを見ながら、じゃあこうしよう、と言った。
「じゃあブンタは別行動にするか」
「え」
「お互い信用できないんじゃ疑心暗鬼だ、良い事なんてない。何かあるとコイツやっぱり、ってなったら面倒だろ。鬼と疑われていきなりお前に殺されるのも嫌だし」
そういうと、ブンタは明らかに動揺している様子だ。たぶん、本能的に一人になれと言われているのが嫌なのと、本まで見せて殺しに来る様子もなくそんなことを提案してくるのならもしかしてコイツは本物では? と思っているんだろう。
「ブンタが決めていいけど、どうする」
そういうと目が泳ぎ、俺とユウカをじっと見つめたが大きくため息をはいた。
「まあ、そんな理屈こねられるのはタツキだけだよな。一緒に行く」
俺とずっと一緒にいたユウカも本物だという消去法にたどり着いたようだ。
「ちょっと待って!」
「いやならユウカ一人になれば」
意義を唱えるユウカに俺がそういうとユウカは悲鳴のような声を上げた。
「何でそうなるの!? ブンタが一人になるべきでしょ!?」
「単純に男手が欲しいし、疑心暗鬼になってても始まらない。俺はここにいるブンタは信じられると思ったから一緒に行動したいだけだ。さっきも言っただろ、疑いの気持ちがある奴が離れるべきだ。ずっと一緒にいたかどうかじゃない、信用の話をしてる」
そういうとユウカは絶望したように俺を見る。何を考えてるのかわかり、ちょっと呆れた。
「ずっと一緒にいた私よりそいつを選ぶの、とか思ってんの? それ、ブンタが俺の意見を優先したからユタカが一人で出ていくきっかけになった状況と同じだからな」
それを聞いてユウカが黙り込んで下を向いた。あの時、友達の意見よりポっと出の奴の意見を優先して怒って出ていったユタカ。あの時ブンタは状況を見て判断しただけだ。俺をアゲてユタカをサゲたわけじゃない。それを客観的に見ればユタカの行動は子供じみた安易な行動だと非難することはできる。
しかしそれがいざ自分が同じ状況になると論理的にはさばけない物なのだ、と実感する事となる。誰だって客観的に見ていればいくらでも批判できる。でもいざ自分の事となるとなりふり構ってられないものだ、特に感情が入ってしまうとなおさら。
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