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「た、助けてくれよ。ここにずっといるのなんて無理だよ、どうすりゃいいんだよぉ!」
「いやそれこそどうすりゃいいんだよ、鬼しか出入りできないのに。警察とか入っても警察も出られませんけど?」
ブンタは頭を抱えて泣き崩れる。泣かれても俺にはどうしようもできないしな。
「まあ、とりあえず逃げれば?」
「え」
「後ろ後ろ」
ブンタが勢いよく振り返ると、真後ろに百面鬼が立っていた。ブンタが何かを言う前に、百面鬼はブンタの頭をわしづかみにして勢いよく回転させる。悲鳴を上げる暇もなかったようだ。ユタカの時よりも手際よく、勢いよく首を引きちぎるとその場に捨てて百面鬼は走って逃げてしまった。
楽しみながらやらなきゃこんなにスピーディにできるんだなこいつ。像を汚したブンタは絶対殺したかったようだが俺と喧嘩する気はないようだ。結構冷静だな。
「ちぎるならちぎるって言え。あ、言えないのか」
返り血を浴びないように後ろに避けて、そのまま像の横を通り過ぎて村を出る。像を通り過ぎた瞬間、ふっと生暖かい風が吹いて景色が変わる。村の外はすっかり夜だ。腕時計を見ると急に針がぐるぐる回り始め、今の正しい時間を示した。そんなやっべ寝坊したみたいな動きされてもな。
今から運転ってだるいが、夜のうちに移動しておく方がいいか。隠しておいたブンタやヒジリのスマホを見ると、明日以降肝試しする奴らからメッセージが来ている。
『おーい、そっちどう? 終わった?』
既読ついたから返事しておくか。
『ざっと見たけどなーんもねーわ』
『マジかよ、話ちげえし』
『明日になったら何か出るかもよ? 明日よろしくなー、実況中継楽しみにしてるから』
さて、明日明後日と来る奴らは全員死ぬからいいとして。俺のアリバイとかいろいろどうすっかな。
あの村が故郷とわかって少し長居したかったからユタカ以外のスマホを盗んでおいて正解だった。いろんな裏工作に役立ちそうだ。あとでGPS機能いじっておかないと辻褄合わくなる。
ふと振り返り、像を見る。黄泉路の入り口を守る妖怪、だったかな。何だっけ、名前。忘れたけど、何だか睨まれているようでちょっと笑った。仕方ないだろ、俺には他にどうしようもできなかったんだから。
探しても探しても見つからない、鬼についての詳細な情報。いろいろ探してはいるが、試してもまったく効果がない事ばかり。とにかく知りたくて、ありとあらゆる鬼に関する情報を調べていたらいつの間にか鬼に詳しくなって、大学に貯蔵されてる蔵書にヒントがないか大学にまで入ってしまった。結局なかったんだけど。
これからも探し続けることになる。鬼の弱点なんてあったら金出してでも知りたい。首を落とそうが心臓を貫こうが火だるまになろうが水底に沈もうが粉砕機の中に入ろうが、いろいろ試してみたけど結局何も効果がないんだ。
「どうやったら死ぬんだろうな、俺」
END
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