鬼宿

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 事前の打ち合わせはこんな内容だった。とりあえずこれから噂の場所に向かい、夕方になったら村に突入。怪しいとこを一通り探索して、何か証拠になるものを持ち帰る。その場所では写真も撮ること。 「掲示板とかの書き込みでは、同じく肝試しした人たちの内容がある。村の入り口には狛犬みたいな像があって、なんか変な音がするらしい」 「どんな音?」 「わからん、書き込みは変な音って書いてあるだけ」  ブンタたちの会話を右から左に聞き流しながらLEDライトが点くことを確認しスマホの電池を見ると89%、小さなかばんには軍手や飲み物、その他あると便利そうな物がいくつか。これだけで十分だ。 「ねえちょっと、マジでこの獣道行くの?」  ヒジリが嫌そうに言えばブンタは当然、と親指を立てる。それはそうだろう、ヒジリはキャミソールだ。雑草は腰の高さまで生えているし木々が芸術品のように絡み合いながら伸びているせいで蔦やら枝やらが顔の高さまである。 「絶対傷できるじゃん、言ってよ」 「廃村だって言ってあったろ」  その返事に不満げに……小さく舌打ちが聞こえたが聞こえないふりをしているとヒジリが俺の方を向いた。 「ねえタツキ君、そのパーカー貸して~?」  可愛らしくしたつもりなのだろうが猫カフェのナンバーワン猫、のんちゃんの方が100倍可愛い。が、そんなこと言うつもりもないし空気を凍り付かせる勇者ではないので仕方なくパーカーを渡した。どうせ下にも長袖来てるからいいや。 「やったー、ありがと!」 「汗臭くても文句言うなよ」 「言わないよぉ~、わー、おっきいね。タツキ君ってひょろっとしてるけどやっぱり男の子なんだ~」  なんだそりゃ、褒めてんのか貶してんのか。いや、貶してるよな。 「下半身分は他の奴に借りな」 「きゃははは、何それいらないって!」  俺がヒジリの好感度を1上げたことが面白くなかったのかユタカが話題を変えてきた。 「そろそろ行くぞ。あ、動画でも撮りながら行くか」 「お、いいねえ。あとでネットにあげよう」  ブンタも同意してスマホで準備をしながら奥に進み始めた。動画なんて撮らなきゃいいのにな、とは思ったがそれを口に出して言う気もない、絶対聞かないだろうから。  途中は虫がいるだの暑いだのとぎゃんぎゃん騒ぎながら進み、休憩を入れながらどのくらい歩いたかという頃に少し開けた場所に出た。 「あ、アレじゃね?廃村」  ブンタが指さす方向には確かに、昭和よりも前に建てられたような屋根の家がいくつか見える。瓦屋根のようなトタン屋根のような、とにかく古い家だろうというのはなんとなくわかる。ただし木々が邪魔であまりよく見えないが。  本当にあるかどうかもわからなかった村がいざ目の前に現れると皆のテンションも上がる。早く行こうと妙な盛り上がりを見せ、先ほどのグダグダ歩いていたのが嘘のようにテンポよく進み始めた。  少し進んだところにどうやら昔使われていたと思われる道が見えてくる。砂利が敷き詰められているせいか、雑草はあまりなく木の根がうねりボコボコに盛り上がっているくらいだ。村へ続いているようで、本当にかつてここに村があったことを思わせる風景に皆のテンションも高い。 その途中、ふと見えたものがあり立ち止まった。 「タツキ、置いてくぞー」 「後から行くから先行ってていい」 「そういうの死亡フラグだぞ」  ブンタが笑いながら足を止める。それに合わせて全員止まり集まってきた。 「どうしたの?」  ユウカの問いかけは無視して俺はソレに近づいた。木の枝や雑草に紛れているが、何かがあるのだ。  枝などを少しかき分けると、像のような何かがたっている。
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